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本性をあばけ【リクエスト】(中編)


こんばんは!

本日も、花様リクエストの続きです!が。
なぜでしょう。昨日の【前編】を上げた時には、前後編と思っていたんです。

でも、本日は【中編】です。
ではどうぞ!(多くは語るまい)




楽屋での読み合わせは続いている。いやもう、すでにそのレベルは映画やドラマの本番シーンを画面で見ているのとほとんど変わらなかった。

「なんで?どうしてあたしのやる事をいっつも邪魔しようとするのよ!」
「邪魔してる訳じゃない」
蓮は絞り出すように言うとぎゅっと拳を握りしめた。キョーコは怒り顔でバン、と机を叩いて立ち上がる。
「だったら何だって言うの?…おかしいわ、あなたらしくない!」
「俺らしくない?」
蓮はゆっくりと顔をキョーコの方に向けた。
「そうよ…いつも冷静で理論的に捜査を進めるあなたが、たまにおかしくなるのよ。なぜなの?」
「俺は…」
蓮はふいと目をそらす。その顔は苦渋の表情を浮かべていて、キョーコは思わず蓮へと近づいた。
「ねえ…何を考えているの?なぜそんな辛そうな顔をするの?」
「辛そう…だって?俺が?」
「そうよ。いいじゃない、いつものように、多少のリスクがあってもその分リターンが見込めれば、それでいいんでしょう?」
蓮は顔を伏せて、拳を握りしめたままぽつりと言葉を返す。
「多少じゃない…」
「え?」
キョーコが言葉を聞き取れなかったかのように聞き返した。さらに蓮に近づき、下から顔を覗き込むような体勢になる。
「万が一君を失うことになったら…リスクが大きすぎて、どんなリターンがあったとしても、補いきれない」
「あたしは死なないわよ」
キョーコは間髪いれずに言い返した。腕を組んで、怒った顔で蓮を見る。
「あたしだってやみくもに突っ込んでる訳じゃないわ。だから、半人前扱いしないでって言ってるの」
「俺から見たら…君はいつも危なっかしいんだ」
「なによ、失礼ね」

「危なっかしくて…見ていられない。できるなら閉じ込めておきたいくらいだ」
ゆらりとキョーコに近づいた蓮に、キョーコは一瞬怪訝な表情を浮かべた。
「何それ…冗談じゃ…」
ゆっくりと距離を詰める蓮に少し気圧されるように、キョーコは1歩後ずさった。蓮はキョーコの様子に構わずさらに足を踏み出す。ゆらり、と背中が揺れて先ほどまでの怒気とは違う雰囲気が蓮から発せされている。

スタジオの一同は息をつめたまま、モニターに釘づけになっていた。司会者もコメントをしなくては、と思いつつもすっかり映画やドラマを見ている気分で、その雰囲気を壊す事が躊躇われて声を出す事が出来ない。

「君が…全く気が付いていない事に一番腹が立つんだ…」
蓮は更にキョーコに詰め寄って行く。キョーコは数歩後ずさったが、ひざ裏にソファがぶつかり、そのままソファに座りこんでしまった。しかし、強気な役柄らしく、座ったままキッと蓮を見上げる。
「あたしが、何に気がついてないっていうのよ」
蓮はキョーコの横のソファ座面に片膝をつくと、両手をキョーコの両脇、ソファの背もたれに伸ばす。完全に囲い込まれる状況となり、キョーコは思わず息をのんだ。
「分からせてあげようか?」
ぽそりと言うと、そのまま蓮は顔をキョーコの顔へと近付けて行く。

スタジオでは「ぁあああ~~~~~~~~!!」という叫び声が、出演者だけではなくスタッフからもあふれ出た。社は思わずスタジオを出ようとしたが、向きを変えたところで隣のディレクターに制するように手首をつかまれた。


2人の唇はそのまま触れるかと思われたが。
あと5cm、というところでキョーコが思いっきり両手を目の前の顔へと突き出した。

ぺちん。

間抜けな音を立ててキョーコの両手は蓮の口を覆う。
そのまましばらく無言の時が過ぎたが、先に口を開いたのはキョーコだった。
「つ…敦賀さん!役に入り込みすぎですよ!!」
真っ赤な顔で抗議するのは、役から抜けたキョーコ本人だ。応えようとしてむぐむぐと声を出した蓮を見て、すみません、と慌てて両手を離す。
「ああ…ごめんね」
「どうして、読み合わせでアドリブ入れるんですか?あんなに展開変えちゃったら意味ないじゃないですか!」

え、アドリブ?どこから?

スタジオ内がざわつく。見ている方も引き込まれていたし、流れもスムーズだったため、どこまでが台本通りでどこからがアドリブなのかが分からない。それにしても、と一同は思った。

蓮は相変わらずソファに座ったキョーコに覆いかぶさったような体勢を維持している。赤い顔で抗議するキョーコを見る目は普段の涼しげな印象ではなく、甘く優しい。

「敦賀さん、紳士は紳士なんだろうけど、なんか俺印象変わったかも」
「お、おお…なんだか、意外だよなあ」
「それに…京子ちゃん、演技うまっ…」

司会者コンビの呟くような感想に、周りも激しく頷く。女性陣は蓮の甘い笑顔にすっかり虜になってしまっていた。

「最上さんが本気で演技に応えてくれたからね。つい役に入ったら、セリフが変わっちゃったんだ」
「…そんなものですか?」
「そんなものだよ」
「でも練習にならないですよ」
「仕方がないよ…この役と君の、寄せられる想いにとことん鈍いところがだぶって、役にぴったりシンクロしちゃったから」
「?? どういうことですか?」
「いや、なんでもないよ…」

キョーコは納得のいかない顔をしていたが、はっと自分のおかれた状況に気がついた。
「ちょ…あの!どいて…いただけますか?」
「どうして?」
覗き込むように蓮が顔を更に近づけたため、キョーコは身を引き、あわあわと手を振り回して必死に説明する。
「どうしてって…!ふ、不自然ですよ!誰かが入ってきたら、変な誤解されます!!」
「誤解、ねえ…。俺が君に迫ってるって?」
「いやあの…そんな感じです」
「その誤解なら、構わないかな」

さらりと返されたセリフに、キョーコが「へ?」と呆けた顔をする。

数秒間の沈黙の後、蓮が我慢しきれず ぷっ と噴き出した。
「最上さん、すごい顔…くっくくく。だめだよ、芸能人なんだからどこで誰に見られてるか分からないよ?」
蓮の言葉に、スタジオで楽屋の様子をこっそり覗き見ている一同はどきっとして顔を見合わせる。「敦賀君、もしかして気がついてる?」などという呟きも漏れた。

「いいです、どうせ今ばっちり敦賀さんにアホ面見られたんですから!」
すっかり蓮にからかわれたと思ったキョーコはぷりぷりと怒りながら言い返す。蓮は笑いながらゆっくりと体を起こすと、キョーコを覆っていた囲いを解いた。そしてキョーコの隣、読み合わせが始まる前と同じくらいの距離を置いて座ると、キョーコは全身の力を抜いた。無意識のうちに体中に力を入れて緊張していたようだ。

蓮が相変わらずの甘い笑顔でキョーコに話しかけようと口を開いたその時、「コンコン」とやや大きな音で扉がノックされ、一呼吸分くらい間を空けてからドアが開いた。扉を開けて入ってきたのは社だ。
「蓮、ごめん遅くなった。あれ?キョーコちゃん?なんでこんなところに?」
いささかわざとらしいが、社が『今気がつきました』という驚いた顔でキョーコに話しかける。

社が楽屋に戻った事で、今回の観察が終わりだと、出演者たちは理解した。司会者がモニタから顔を上げれば、蓮が楽屋を出てこちらに来るというカンペが出ている。
「い、いやあ…スリリングな楽屋でしたねえ」
「うわー、できれば京子ちゃんも一緒に来て欲しいけど…敦賀さん事情知らないし、無理だよねー」
モニターの向こうでは、社に促されて蓮とキョーコが楽屋を出ようとする様子が見える。何やら会話を交わしているが、スタジオの音声に消されて内容は聞こえない。2人の横では、社が背中に汗をびっしょりかいて懸命に平静を装っていた。

とりあえず…決定的な何かはなかったよな…うん。
スタジオで突っ込まれるかもしれないけど、これくらいなら蓮はさらっとかわすだろうし、危ないところだったな…

社がほっと安心して気を抜き、スタジオも何のタイミングか、会話が途切れて一瞬の静寂が訪れたその瞬間。楽屋からの音声が、しっかりとスタジオに入ってきた。

「そういえば最上さん、今日この後仕事は?」
蓮の問いに、キョーコははきはきと答える。
「今から事務所に戻って、ラブミー部の頼まれ仕事で事務作業したら終わりです」
「そうか…今日は俺もこの収録で終わりなんだ。一緒にご飯でも食べない?」

キョーコは常日頃食生活がぞんざいな先輩俳優が食事について触れたことで、ぱっと笑顔になった。
「あ、じゃあ私、またマンションにお邪魔してお食事作りましょうか?」
「いいの?じゃあ、お言葉に甘えていいかな。疲れているだろうに申し訳ないけど、最上さんの料理楽しみだな」
「ほんとですか?大丈夫です、敦賀さんにしっかりお食事を取っていただけるこのチャンス、無駄にはしません!!」

スタジオを更なる静寂が支配する。

京子ちゃんが…当たり前のように、敦賀君の部屋で手料理を振舞う?それって…

先ほどまでのやり取りでなんとなく感じていた疑念が裏付けられ、ある意味衝撃に打ちのめされたスタジオ内の一同。しかし、この場にはすぐに蓮がやってきて、トークが始まる手はずになっている。
先ほどの楽屋の様子をどれだけ放送内に入れていいのやら。それによって蓮に対して振る話も変わってくるため、カメラを止めてスタッフと司会者の間であわただしく打ち合わせが行われた。
そして、まだざわつくスタジオ内で再びカメラが回り始め、ゲストとして蓮を迎え入れることになったのだった。

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コメントコメント


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ニマニマ♪

きゃー!!顔のニマニマ笑いが止まらない。
ニマニマ…ニマニマ…ニマニマ…
この後のスタジオでのトークで蓮さんが何とのたまうのか非常に楽しみです。ニマニマ。
キョコちゃんもスタジオ来ちゃえばいいのに。(笑)
では、またまた続き、楽しみにしております。

花 | URL | 2013/05/02 (Thu) 11:33 [編集]


Re: ニマニマ♪

> 花様

わーい♪
ニマニマしていただいてありがとうございます!
蓮さんの積極的だか何だかよく分からない行動、さてどう出るか!
さて、今日は更新できるのか!
続き、お待ちくださいませ…。

ぞうはな | URL | 2013/05/02 (Thu) 18:27 [編集]