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本性をあばけ【リクエスト】(前編)


こんばんは!

連載も終わりましたので、ようやく1万ヒットのリクエストに着手です。
短編でお話がまとまったものから、順次いかせていただきます!

本日は…花様リクエストです!
花様からのリクエストはこんな感じでした。

『ドッキリ企画とかでテレビ局の控室に隠しカメラ。 そこに何も知らない蓮さんとキョコちゃん(+社さん)がたまたま入ってきて…』

長くなってしまったので、ぶった切りですが本日は前編です。
続きは明日か明後日の更新になりまーす。

ではでは。






某テレビ局のスタジオでは、バラエティ番組の収録が進められていた。
人気お笑い芸人コンビが司会を務めるその番組は毎週放送されているレギュラー番組だが、今日はスペシャル放送の収録で、放送時間も普段より長くゲストも豪華だ。しかし、一番のメインゲストはまだスタジオのセットの中にその姿を現していなかった。

セットの背後に設置されている大型ディスプレイには、そのコーナーのお題が大きな字で掲げられている。

『敦賀蓮の本性に迫る! ~紳士の仮面を剥がせ~』

これは、この番組の人気の一コーナーだ。
芸能人にまつわる噂を検証するため、楽屋や打ち合わせ場所に隠しカメラを設置して行動や会話をスタジオで観察するのだ。これまでも、独り言が激しいタレントや裏表の激しい芸人がその本性を暴かれ、晒されてきている。

この日、蓮のスタジオ入りは他の出演者より1時間以上遅れて設定されていた。楽屋には小型カメラが巧妙にカモフラージュされて何台もスタンバイされ、その様子をスタジオで見られるようになっている。番組は生放送ではないものの、スタジオではライブ感あふれる楽屋の映像が入ってくる、という仕掛けだ。

「あ、きましたきましたよーー」
司会者が声を上げる。ご丁寧に廊下にまで仕掛けられたカメラが、ターゲットの俳優とそのマネージャーが歩いてくる様子を映し出していた。
「さすが、芸能界一のイイ男と言われているだけあって」
「ねえ。ただテレビ局の廊下を歩いてるだけでここまで決まる男もいませんよ」

何も知らない蓮は、普段通りに楽屋に入ると荷物を置いて椅子に腰かける。社が入り口でスタッフと言葉を交わしてから蓮に向かって話しかけた。
「一応、前の打ち合わせ通りで、今日はこのまま本番だって。ただ、収録が押してて少し待たされるらしい」
「分かりました」
携帯が鳴り、慌てて手袋をはめながら社が楽屋を出て行く。

実は、社は仕掛け人側で、蓮を楽屋に1人にするという役割を担っていた。どっきりの類は通常だったら仕事として受けはしないのだが、今回はさほど特別な仕掛がある訳でもなく、蓮の楽屋での普段通りの様子やタレントやスタッフに対する態度を撮るだけ、ということで社はかなり安心していた。
女優やタレントが挨拶に来るくらいでは蓮の『紳士』は崩れない。いや、特定の1人の少女が絡みさえしなければ、何が起ころうと何の問題もない。番組的には面白みに欠けてしまうかもしれないが、事前のスタッフとの打ち合わせでそれでもOKと言われていたので、社はこの仕事を受けたのだった。

蓮は置かれている水のペットボトルを開け、カバンから台本を取り出すと集中して読みだした。
スタジオでは司会者がその様子にコメントを入れる。
「さすがトップ俳優…こんな隙間時間でも台本チェックですねえ」
「雑誌のグラビア見てる誰かとは違いますね」

しばらく動きのない映像が流れた後、スタジオにいた1人のグラビアタレントが蓮の楽屋へ向かった。蓮の反応を見ようという試みだ。

コンコン、というノック音に蓮が顔を上げる。
「はい」と返事をして立ち上がると、ドアを開けた。グラビアタレントはこのために体のラインを強調する衣装を着て、胸元もかなりきわどいところまで開けている。
「あ、おはようございますーーー。今日、ご一緒させていただきます~~」
タレントの媚びるような挨拶にも、蓮は全く動じず柔らかい笑みを湛えて挨拶を返す。にこやかだが隙を見せない蓮に、タレントはなんとか粘ろうと頑張ったが、ドアの外で挨拶だけしてそのまま退散せざるを得なかった。

スタジオに戻るや、タレントは赤い顔で報告をする。
「あの笑顔を正面から見るともう…だめです~~~。あああ、素敵~~」
「君が悩殺されてどうするの!」
「全然崩せてなかったじゃない!せめて中にお邪魔しないと」
司会の突っ込みにも、ぱたぱたと両手を振って降参した。
「無理!無理!絶対無理ですよぉ~~。敦賀さん、隙がないんですもん!」

その後も、スタッフが蓮の楽屋を訪れてやや失礼な物言いをするとか、いきなり蛍光灯の交換作業が始まるとか、何回かの試みが為された。しかし蓮はスタッフにはやんわりと釘をさしたものの、それ以外は決して怒らず面倒くさがらず紳士的に対応し、普段まとっている微笑を絶やさない。社も(まあ、いつもの蓮ならそうだよな)と落ち着いてスタジオの隅でモニターを見ていた。
スタジオのムードは、「やっぱり敦賀蓮はいつもああやって紳士なんだな」という意見に統一されつつあったのだが。

コンコン とノックの音が蓮の楽屋に聞こえた。

「ん、ちょっと待ってください、なんか動きがありますよ?」
司会者が気がついて注意を促す。スタジオではこの時点、特に何も仕掛けをしていなかったため、「誰だろう?」と皆がモニターに注目した。
台本読みを何回も中断されている蓮だが、気を悪くするでもなく「はい」と返事をして顔を上げると、ドアががちゃりと開き、「あ、敦賀さん、お疲れ様です!」という若い女性の声が響いた。

「ん?誰?タレントさんかな」
「ショッキングピンクの服着てるけど、芸人さん?」
などという声がスタジオ内に飛び交い、皆がモニターを覗き込む。

「やあ最上さん、お疲れ様。どうしたの、今日はラブミー部の仕事かな?」

蓮の嬉しそうな声が聞こえた瞬間、スタジオの隅にいた社の口から「やばい!」という小さな叫び声が飛び出した。隣にいたプロデューサーにちらりと見られて、慌てて口をつぐむ。

今日はキョーコちゃん、仕事はなくて学校だけって確認済みだったのに…まさか学校終わって事務所に行ってそのままラブミー部の仕事か?もうかなり忙しいんだからそんな雑用わざわざ引き受けなくても~~~!
椹さんに…伝えておけばよかったかーー。んんん、でもなんて説明するんだ?

「何がやばいんだって?」
社が頭を抱えて悩んでいると、たまたま通りかかったディレクターがにやにやしながら話しかけて来た。


蓮の楽屋に入って来た女性の姿を確認し、ゲストの1人が声を上げた。
「あ、あれ京子ちゃんだ!なんであんな格好なの??」
司会のコンビが納得して頷く。
「京子ちゃんって、ああ、美緒やった京子ちゃんか!!そういえば敦賀君と同じ事務所だね~~」
「すごいなあ、あの格好!下手な芸人よりインパクトあるな。あれ私服?」
「まさか!」

スタジオ内がざわざわとざわめく間、キョーコは蓮に迎え入れられてソファへと腰を下ろした。蓮も少し間を空けてソファへ座る。
「ちょうどこのフロアに用事があって…前を通りかかったのでご挨拶をと思ったんですけど、お時間は大丈夫なんですか?」
「ああ、まだ収録までに待ち時間があるみたいだから、それは大丈夫」
「そうなんですか」
キョーコはホッとしたように笑い、蓮もそんなキョーコを見て柔らかく微笑んだ。

「京子ちゃん、簡単に楽屋の中に入ったなあ」
「なんか…なんかいい雰囲気なんじゃない?」
司会の芸人がモニターを見ながら呟いたが、ちょうどその直後、まるでその言葉をうち消すかのようにキョーコが声を上げた。
「あ、でも!もしかして台詞覚えていらっしゃるところだったんじゃ…」
蓮が台本を覚えるときは1人になれる場所で静かに、と言う事を知っているキョーコは蓮の手にある台本を見て慌てた。が、蓮の方は全く気にした様子はない。
「ん?ああ、まあね。でももう大体入ったから大丈夫」
「そうなんですか?」
「うん……あ、そうだ、最上さん。今時間はある?」
「はい。あとは事務所に戻るだけなので…」
「じゃあさ、ちょっと読み合わせに付き合ってもらえるかな?」
「え…?それは…構いませんけど……」
キョーコは首をかしげた。余程役に躓いている時でもない限り、台本を覚える以上に読み合わせが必要な事など、蓮にあるのだろうか。
「そんな不思議そうな顔しないで。ここ、かなり激しい言い合いのシーンなんだ。ちょっとどれくらいのテンポがいいのか確認しておきたくて」
蓮は台本のページをめくると一つのシーンの部分を指しながらキョーコに渡す。簡単にキョーコが読む部分の役柄の説明をすると、キョーコが台本に目を通すのを待った。
「大体、大丈夫ですけど…このシーン、最後までやるんですか?」
キョーコがおどおどと蓮の様子を伺う。
「言い合うところまででいいよ。俺が止めるから」
蓮がくすりと笑いをこぼすと、キョーコは恥ずかしそうな顔で「分かりました」と頷いた。
「よしじゃあ、さっそくやってみようかな。いいかい?」
蓮はソファから立ち上がる。

「おおお、なんか貴重なもんが見られそうな感じ」
「敦賀さんが持ってる台本が、この局のドラマのでよかったなあ」
蓮が主演する刑事ドラマの番宣を兼ねた特番へのゲスト出演だったので、うまい具合に行ったとも言える。妙に機嫌のいいディレクターからも引き続きモニターをチェック、という指示が出ているので、出演者たちは様子を見守ることにした。

「何度言ったら分かるんだ!」
急に響く怒りに満ちた声に、スタジオ中がびくりと跳ねる。一瞬の間をおいて、出演者達は顔を見合わせて「びっくりした」と囁き合う。

蓮の楽屋では緊迫した空気がぴんと張り詰めていた。
「分かってないのはあなたの方よ!あたしを半人前扱いしないで」
「誰もそんなことは言ってないだろう。どうしてわざわざ自分の命を危険にさらそうとするんだ」
「私がやらなきゃ他の誰かがやるだけなのよ。なのに、あたしに敵の前から逃げろっていうの?」
「そうじゃない。もう少し、確実な手を取れと言っているだけだ」

これ、読み合わせ?と首をかしげるほどの、臨場感があり感情に満ち溢れたセリフの応酬が続く。スタジオの一同は黙りこんでモニターに注目したのだった。

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