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Personal Engagement (24)


今日は少し遅めですが、こんばんは!
ううー。寒い。
と思っていたら、ニュースで青森県の雪の様子が流れていてびっくりしました。
気温ががたがたですが、皆さま調子を崩さないようにお気を付けください!

今日もなんとか更新です。
週末はお休みで、次の更新はまた週明けでーす。





キョーコがバスルームのドアを開けてそろりと顔を出すと、既に蓮は社の部屋から戻ってソファに座っていた。蓮はドアの音にすぐに気がつき、キョーコの方を見て笑いかける。

「さっぱりした?」
「はい…色々お借りしちゃってすみません…」
キョーコはきょろきょろと視線を泳がせながらバスルームから出てきて蓮のそばまでやってきた。蓮は少し体をずらすと、自分の横をぽんぽんと叩いてキョーコを促す。キョーコは少し躊躇いながらも言われるままに蓮の横にやってきて、おずおずと腰を下ろした。

蓮はそっとキョーコの様子を伺う。
昨夜ベッドになだれ込んだときと同じワンピースを着たキョーコを、改めて明るい光の中で見るのはなんだか感慨深い。あまり色々想像するとまた何かと不都合がありそうだ、と蓮は考えを断ち切って話を切り出した。
「昨日言ったけど…君と俺とで結んだ契約は、昨日付けで終了、だね」
「はい」
2人はそれぞれの携帯に音声データとして残していた契約内容を同時に消去した。しばらく携帯の画面を見つめていた蓮が、顔を上げてキョーコを見る。
「それでね…今更だけど、俺はひとつ君に謝らなくちゃいけないことがあるんだ」
キョーコはどきりとした。昨夜のあれこれについて何か否定的な言葉が来るのかと、思わずこわばった顔で身構える。
「昨日で契約の目的を達成して無事終了、なんてえらそうに言ったんだけど」
言葉を切った蓮を、キョーコは不思議そうに見た。蓮は頭をガリガリとかいてから、言葉をつなぐ。
「実は…本当はもっと前に解除条件が満たされてたんだ」
「え?解除条件って…」
キョーコは慌てて思い返す。契約が途中で解除になる条件は…。

「覚えてるよね?君に本当に好きな人ができたときと…その反対」
あ!とキョーコは口を開けた。
そんな可能性、のっけから否定していたし、契約中に他に気になる人ができたなんていうことは当然なかったので、すっかり忘れていた。しかし、自分の身に覚えがないとすると、考えられるのは一つ。
「蓮さんに…」
「うん、好きな相手ができてた。ただ、自己申告って条件だったし…君は言ったよね?他に好きな人がいる男の恋人役なんていやだ、と」
「確かに…言いましたけど……」
「だから、いいか、と思ってね。好きな人はできたけど、『他に』じゃなかったし。契約上であろうと本心だろうと、君だけ見てる分には問題なかっただろう?」

キョーコは蓮を見たまま固まった。しばらくフリーズしてから、急におろおろと目を逸らす。
「なんでそこでそんなにうろたえるの?」
蓮は少し不満げに聞いた。昨日あんなことになったのだから告白は当然の成り行きだろうに、なぜ照れるでもなく慌てるのか、と思う。
「あの…だって。その、そういうことを全く聞いてなかったので…昨日のも一時の気の迷いかも、とか…」
「そんな訳はないだろう。…大体、おかしいと思わなかったの?」
「何がですか?」
まったく分からない、という顔できょとんと見られて、蓮は長くため息をついた。
「対外的に恋人を演じるだけなのに、電話の頻度が高いとか、2人きりの時にくっつくとか」
「…!それは!不思議には思いましたけど、だって、蓮さんが、慣れるためって…!」
「それでもキスまでする必要はないだろう?…そうか、俺の言葉そのまま鵜呑みにしたのか。…キョーコは騙されやすいな」
「ううう……でも!昨日だって!!」
キョーコは言い負かされそうになりながらも必死に反論を試みた。
「昨日だって、あんなことしたのに…な、何も言わなかったじゃないですか!」

「……言えなかったんだよ」
蓮はしばしの沈黙を保った後、ため息とともに言葉を吐いた。
「え?」
キョーコが見ると、蓮は膝に肘を当てて頬杖をつき、少し照れたような顔であさっての方向を見ている。
「…あの最中にそんなこと言ったって…どうせそれこそ気の迷いで本心じゃないって思われるだろうから…言いたかったけど、言えなかったんだ」
「は……」
何かを思い出したのだろうか、キョーコの顔が真っ赤になった。
「ホントは、ちゃんと気持ちを伝えてから、て思ってたんだ」
そして蓮は真正面からキョーコの顔を見据えた。
「キョーコ。形だけの恋人の契約は昨日で終わったけど…今日からは契約なんて関係ない、俺の恋人になってほしい」
「ほんとに………ほんとに?私でいいんですか?」
「君じゃなくちゃだめなんだ。君に、そばにいてほしい」
「でも私……私、地味だし色気もないし、スタイルも良くないですよ?」

蓮は笑って俯き気味のキョーコの髪をするりとなでた。
「本気で言ってる?キョーコ…昨日はあんなことするつもり、俺にはなかったんだよ」
「は…はい?」
「なのに、君のせいで止まらなくなった」
「私のせいですか?」
「そうだよ…キスした時の君が可愛くて色っぽくて、すべてが欲しくなって我慢できなかった……それに、心のどこかで、このまま抱いてしまえば…君を手放さなくて済むかもしれない、とも思った。そんな風に思わせる君が、色気がない訳がない」
「う……」

「それで、君の返事は?」
「は、はい!…あの……私でよければ…その、喜んで…」
蓮ははーーーーっと息を吐きだした。
「よかった……昨日の事で嫌われたらどうしようかと思った…」
「…そんな…嫌うくらいだったらその前に逃げます…」
「…じゃあ、結果的にはよかったってことかな?」
キョーコは恥ずかしそうに蓮の笑みから目をそらしたが、何かに気がついて「あれ?」と声を上げた。

「どうしたの?キョーコ」
「い、いえ…なんでもありません」
「疑問があったら素直に聞いた方がいいよ」
「いえあの」
「キョーコ?」
「……う。あの…その…蓮さん、昨日はあんなことするつもりはなかったって、今仰いましたよね?」
「うん」
「だけど……昨日、ちゃんとするからって…」
「…ああ。そのことか」
「なんで…持ってたのかなって…」
「そりゃあ、一応ね。万に一つの可能性でも、備えておくものだよ。役に立ったから、いいだろう?」
「そ…うですけど……?」
「ああでもごめんね。さすがに1つしか持ってなかったから、今はもうできないよ」
「し、しません!!!!!!!」
キョーコは真っ赤になったが、そんなキョーコを見て、蓮は嬉しそうに笑うのだった。


2人はホテルをチェックアウトすると、少し観光をしてから帰ることにした。社はキョーコと顔を合わすことなく速やかに退散しており、どんな顔で会えばいいのか分からなかったキョーコは少しほっとする。

駅に向かって歩きながらキョーコが尋ねた。
「何が見たいですか?」
「そうだね…やっぱり落ち着いて静かなところがいいかな」
「定番スポットは要りません?」
「うん…言ってなかったっけ?俺も3月までは京都にいたから」

えっ??とキョーコは驚いて蓮を見た。
「初耳ですけど…」
「あれ?言ってなかったっけ」
「聞いてません!」
「そっか…数年だけどね。いたんだよ、京都に。仕事しかしてなかったから、観光スポットはあまり知らないけど」
「そうなんですかー。知りませんでした!じゃあ、すれ違った事、あるかもしれませんね!」
キョーコが嬉しそうに言う。
「あ、でも、蓮さんみたいな人とすれ違ったら、絶対覚えてますね」
蓮は ふ、と笑みをこぼすと話題を変えた。
「…そうかな?さて、じゃあどこに行こうか」
「あ、じゃあ、ひとつお勧めの神社があって…」
2人はそのまま仲良く、観光へとでかけたのだった。


午後になり、数か所を回った2人は京都駅に戻ろうとしていた。
「最後に1か所だけ寄りたいところがあるんだ」
そう言う蓮に促されてタクシーに乗り、外の景色を眺めながらキョーコは思う。

この辺…大学に近いな…

そして、タクシーを降りた蓮が迷わずに辿り着いた先を見て、キョーコは思わず立ち止った。
そこは、つい数か月前まで毎日のように通った、キョーコのかつてのバイト先だった。



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コメントコメント


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初めて出会ったお店に

店員だったキョコちゃんと必ずそこにならんだ彼。
キョコちゃんは思い出すのでしょうか?
来週も楽しみです。

美音 | URL | 2013/04/20 (Sat) 00:13 [編集]


Re: 初めて出会ったお店に

> 美音様

いつもコメントありがとうございます!
キョコさん、今の段階では全く蓮さんと常連客の関連には気づいてませんですしね。
そして、気付いた時どうなるのか。
来週まで、お待ちいただければと思います。

ぞうはな | URL | 2013/04/20 (Sat) 23:01 [編集]