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Personal Engagement (23)


こんばんは!

なんとか、今週は珍しく連続更新が出来ています。

それもこれも、早く続きを読みたいと楽しみにしてくださってる皆さんと、残業続きで帰りが遅いダンナのおかげ…。(うん、頑張れ大黒柱!)

では早速、続きです。





「ひゃっ…蓮さん?」
気がつけば、またもや蓮の腕の中。この契約中に何回こうやって不意打ちで抱きしめられただろう。
でも今は、今までで一番、鼓動が速い。抱きしめられるだけでくらくらする気がする。なんで?と思う間もなく、蓮の声が耳元で聞こえた。
「今日の君を見てて…そうかなと、そうであってほしいと、思ってた…」
拘束がゆるんだのでキョーコは蓮の顔を見上げた。そこには、いつもの優しい微笑を湛えた美しい顔がある。この距離で見られることが、今はたとえようもなく嬉しい。そうであってほしいって、蓮さんと会いたいって言った事?そう思いながら蓮の顔を見つめる。

「ほら。そんな顔するから…」
囁くような言葉とともに、蓮の唇がおでこにおりてきた。思わず目をつぶると、おでこの次に唇に柔らかい感触が感じられる。

キス…されたの?

そろりと目を開けると、すぐ目の前にまた蓮の微笑。
「まだだよ…」
ひそりと囁かれて、また唇が重なる。何回もついばまれる内に、キョーコはすがるように蓮の腕をつかんでいた。
軽く触れるだけだったキスが、段々と長く深くなる。強引な、独りよがりなものではなく、お互いの気持ちを確かめ合うようなキスに、キョーコは恐る恐る、けれども必死に応えていた。
蓮の唇がそっと離れていく気配を感じて、キョーコは思わず引き止めるように蓮の腕をきゅっとつかんで引く。蓮の腕がぴくりと震えた、と思ったら、キョーコの体は持ち上がってぐるんと回転した。

なに???

慌てて目を開けると、下向きになった視界が揺れている。担ぎ上げられてる!と気が付いたが、すぐにまた体が今度は逆に回転して、ぽすん、と柔らかいところに仰向けに着地した。

キョーコはパニックになりつつも自分のおかれた状況を把握する。
目の前に蓮の顔があるのは先ほどと同じなのだが、短時間のうちに状態は激変していた。
自分が今いるのはソファではなくベッドだ。しかも、仰向けに寝ている。そして目の前に蓮の顔があるということは、上から覗き込まれていると言うこと。自分の顔の両脇に蓮が腕を付いて、囲われているような状態だ。柔らかい照明に照らされた蓮の表情は先ほどの笑顔ではなくて、どこか苦しいような切ないようなものになっている。

ああ…蓮さんの髪、さらさら…

動転しすぎたのか、どうでもいいことを考えてしまったキョーコの耳に蓮の声が飛び込んできた。
「誤解されたくないから言うけど……これは契約とは何も関係ない……だから…」
蓮は一度ぎゅっと目をつぶると、真上からキョーコの顔を見た。
「だから、無理してほしくない……嫌なら、嫌と言ってほしい…」

キョーコはなぜだか蓮の意図をすんなり理解した。そして、目の前の蓮の顔を見て思う。嫌なら嫌と言って、と口では言っているけど、表情は逃げないでと言っている、と。何よりも、自分は緊張しているし恥ずかしいし頭は沸騰しそうで泣きそうだしどうしていいのか分からなくて硬直してしまっているけど、不思議と「嫌だ」という気持ちはない。
キョーコはふるふると頭を振ると、片手をあげてそっと蓮の頬を包み込んだ。半分泣きそうな顔で、それでも笑ってみせる。
「キョーコ…」
蓮は呟くように言うと、頬に添えられたキョーコの手を片手でつかみ、縫い付けるようにベッドに押し付けると、深く激しく口づけた。



フワフワと漂うような浅い眠りの波間から覚醒し、キョーコはぱかりと目を開けた。
ぼんやりとした薄明かりの中に見慣れない天井が見えて、頭が現実を認識する。ゆっくり顔を横に向けてみれば、長いまつげを伏せて眠る男性の顔が見えた。

蓮さんの寝顔見るの、はじめて……寝てても綺麗って、ずるいな…

ころりと寝返りを打って、体ごと蓮の方に向いてみると、頭の下に蓮の腕が敷かれていることに気づいた。

腕枕だぁ…でも、血が止まって辛くならないかな?

少し頭をずらして腕に重みがかからないようにしながら、規則正しい寝息を立てる寝顔に見入る。ふと視線をずらすと、はだけたシャツの間から蓮の鎖骨と胸元が見えて、少し前の出来事を思い出し、キョーコの頭は一気に沸騰した。

なんで…こんなことになったの、キョーコ??
そりゃ、結婚するまで絶対に綺麗な体で、なんて誓ってたわけでもないけど!!いやだって、結婚なんてって思ってたし…!
でもでも、普通は告白したりされたりして、しばらく清いお付き合いをして、それでそれで…!!!
って、後で考えたって仕方ないのよね……

自分の体を晒すなど、できるわけがないと思っていたし、こんな貧相な体を見たって誰も喜びはしないと思っていたのに。もちろん初めてのことでとにかく滅茶苦茶恥ずかしかったのだけど、それ以上にキョーコの全身を支配する感情があった。

肌の上を滑る指も、唇も。
熱く潤んだような視線も。
耳元で何回も囁かれる自分の名前も「可愛い」という言葉も。
こらえるように時々吐かれる熱い吐息も。
その瞬間の裂かれるような痛みでさえ。

すべて、喜びと蓮への愛しさで満ちた気持ちで受け止められた。
蓮が自分を欲してくれている、ということが、これほどまでに嬉しい事だとは、思ってもみなかった。

キョーコはゆっくりと体を起して、蓮の寝顔を見おろした。
顔を見ているだけで、涙がこぼれるような胸を締めつける気持ちがあふれてくる。目が覚めて、横に蓮がいるのは幸せな事だと思えた。いつの間に、自分はこんな気持ちをこの人に対して抱くようになったのだろうか。肌を…重ねたからだろうか。

でも…蓮さんの気持ちは?

求めてくれたということは、蓮も、同じ気持ちでいてくれるのだろうか。
それとも、男の人だから一時の、と言う事があるのだろうか。終わった後、体を気遣ってくれて、シャツも貸してくれて、優しい言葉をかけてくれたけど、蓮の気持ちはまだ聞いていない。

「蓮さん…蓮さんにとって私はなんなんですか?」

小声で寝顔にそっと話しかけてみる。すると、声が聞こえたのだろうか、まぶたがピクリと震えて、やがてゆっくりと目が開いた。

「…キョーコ…起きてたの?」
「あ、すみません…起こしちゃいましたね」
「ん、大丈夫だよ。寝られない?体、辛い?」
「いえ、辛くないです!ちょっと、目が覚めちゃっただけで」
そう?と呟くと、蓮はキョーコの方に体を向けて腕を伸ばし、キョーコの髪を漉いた。そして、ふふ、と笑みをこぼす。
「何がおかしいんですか?」
「いや…おかしいんじゃなくてね。目が覚めた時キョーコがいるのが、幸せだなって思っただけだよ」
キョーコはビックリした顔で蓮を見つめてから、ほにゃ、と笑った。
「よかった…私も今目が覚めた時、同じ事思ったんです」
「ほんとに?それは嬉しいな……さて、まだ朝まで時間があるからもう少し眠ろう。おいで」
キョーコは素直に横になった。蓮に抱きしめられるような体勢が、少しくすぐったい。

「朝起きたら…伝えたい事がたくさんあるんだ。聞いてくれる?」
「今じゃダメなんですか?」
「うん……明るいところでちゃんと向かい合って話したいな」
「分かりました」
「ありがとう…おやすみ」
「おやすみなさい」
それから2人は寄り添ったまま、再び夢の波間に潜っていった。


次にキョーコが気がついた時には、何かの電子音が鳴っていた。
目覚まし…と寝ぼけた頭で考えたが、音がやみ、男性の話し声が聞こえたので、ああ、電話か…と考えたところで目が覚めた。
はち、と目を開けると目の前には蓮の背中が見える。ベッドサイドに置かれた内線電話で誰かと話しているようだ。
「はい…いや、今は。ええ、……わかりましたよ。…はい、10分後に」

キョーコは上半身を起こして受話器を置いた蓮の後ろ姿に話しかける。
「おはようございます…」
「ああ、おはよう。眠れた?」
「はい…あの、私寝坊しちゃいましたか?」
「ううん。まだそれほど遅い時間じゃないから大丈夫」
よく見ると、蓮はすでに着替えを済ませている。自分はまだ蓮に借りたシャツ1枚でベッドにもぐっている状態なのが急に恥ずかしくなってきた。着替え!と見回すと、隣のベッドの上に昨日着ていた洋服が軽く畳まれて置かれているのが目に入る。

「す、すみません!私…!!」
「ああ、気にしないで。ちょっと社さんの部屋に行ってくるから、その間にシャワー浴びてるといいよ」
「は、はい…」
「社さんがこっち来そうになったんだけどね。さすがに…」
「もしかして…私がここにいるってこと…」
「はっきりは言ってないけど…さっきの口調だと、察してるなあ」

は…恥ずかしい!!!!!

キョーコは真っ赤な顔で着替えをひっつかむとバスルームにしばし籠ったのだった。

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| | 2017/02/14 (Tue) 03:52 [編集]