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Personal Engagement (18)

こんばんは!
ぞうはなです。

今週はあちこちで入学式ですねー。地域によって微妙に日程が違うんですね。
今年は我が家は進級はあっても進学がなかったので割と落ち着いています。それでもやっぱり年度の変わり目ってばたつきますねえ。

さて、連載の方ですが、もうコンパクトにまとめることは諦めました…(いやそれこそ今さら!)
だらだらと続いて行きますが、お付き合いいただければと思います~~




キョーコと蓮がそれぞれ自分の行動にため息をついた夜以降、蓮は仕事が忙しかった上にキョーコより先に京都入りしたため、2人が東京で顔を合わせる事はなかった。

蓮からは毎晩電話があったが、キョーコはさすがに恥ずかしく戸惑いもあり、あの夜の事には触れられず、当たり障りのない会話を交わすのみだった。ただ、金曜日の夜にもらった京都からの電話での「早く会いたいな…明日、ここで会えるのを楽しみにしてる」という耳元で響く蓮の言葉に、キョーコは1人の部屋で真っ赤になってしまったのだった。


そして土曜日。
京都駅に降り立ち、待ち合わせに指定された場所に向かったキョーコの目に、1人の男性の姿が入った。
「やー、お疲れ、キョーコちゃん!」
にこにこと笑顔を浮かべて近寄って来たのは社だ。
「お疲れ様です、社さん!」
キョーコも挨拶を返してから、きょろりと周りを見渡した。
「社長は…いらしてないんですか?」
「ああ、うん。なんか今日は急にアポイントメントが入ったとかで、蓮だけ単独行動。まあ、行き先は聞いてるから、そこで合流しよう」
社はキョーコのボストンバッグを無理やり引き取ると、タクシー乗り場に向かって歩き出した。

タクシーで向かった先は、1軒のブティックだった。ガラス張りの店内にはゆったりと洋服がディスプレイされ、全体的に落ち着いた雰囲気だ。

ここを通りかかっても、まあまず入りはしないわよね…

明らかに自分のサイフに見合う店ではない、と考えながら、キョーコは社に促されて店に入った。奥から小柄で可愛らしい感じの若い女性が出てくる。社が名前を告げると、女性はぱっと笑顔になった。
「お待ちしてました!蓮ちゃんもそろそろ着くと思うから、奥にどうぞ!」

蓮ちゃん!

2人はそれぞれ声に出さずに叫んでから、女性に続いて奥へと進んだ。案内された奥の部屋も窓が大きく取られ、フィッティングスペースの手前に応接セットがある。壁際にはメイク道具が並べられたスペースもあり、その横にあるキャスター付きの数台のハンガーには、色とりどりの服が吊るされていた。服はどれもこれも女性物だったため、キョーコはもしやと不安になる。

「あたしはジェリー・ウッズって言うの。ここでセレクトショップをやってるけど、本職はメイクとスタイリストよ。あたしのことはテンちゃんって呼んでね、よろしく!」
よく分からないまま、よろしくお願いします、と頭を下げたキョーコにつかつかと近寄ると、テンはにこりと笑った。
「うん!任せてね!男どもがびっくりしちゃうくらいに仕上げてあげるから!」

キョーコが面食らって社を振り返ると、社はきょとんとキョーコを見返したが、やがて合点した様子になる。
「もしかして、蓮から何も聞いてない?」
「はい…なにも…」
「そうか…いや、ここでキョーコちゃんの今日の服を見繕って、ヘアメイクもしてそれからパーティーに向かう、という予定なんだ」
「ぬあっ!!!??そんなの、聞いてません!だって私、服も持ってきましたよ??」
半ば叫び声で訴えかけるキョーコに、社は遠い目になった。
「事前に言ったら全力で拒否されるって分かってたんだな、あいつは…まあもうほら、楽しみにされてると思うから、言う事聞いてあげて…」

蓮ちゃん、サプライズで喜ばせたかったのかしらねー♪ とニコニコしながら、早速テンは突っ立ったままのキョーコを眺め、ハンガーから似合いそうな服をチョイスしていく。キョーコはすっかりまな板の上の鯉の気分だ。

やがて、ノックの音とともに1人の男性が入室して来た。
「すみません、少し遅れました」
数日振りに直接聞く声に、笑顔に、キョーコの心臓が大きくどくんと跳ねる。何も言えずただその姿を見つめるキョーコに、蓮は微笑みながら近づいて来た。
「どう?気に入った服はあった?」
「………あ…」
キョーコの視線はうっかり蓮の口元に吸い寄せられてしまった。数日前の夜のことが一気にフラッシュバックする。
「どうした?」
聞こえた声にキョーコはハッと戻ってくると、やっと口を開いた。
「気に入ったとかじゃないですよ!どうしてこんな…!」
「おや?こういう機会でもないとなかなかプレゼントを受け取ってはくれないだろ?」
「ぷ、プレゼントなんてそんな頻繁にもらうものじゃないんです!」
「俺があげたいんだから素直に受け取ってくれればいいんだけど」
「そんな、いただくばかりで申し訳ないんです!!」

すると蓮は真面目な顔でしれっと言い放った。
「逆だよ。キョーコがいてくれるだけで俺は一方的に色んなものもらってるんだから。これは単なるお返しだ」
キョーコのみならず、社も目を丸くして絶句した。テンだけは「若いっていいわねえ」としみじみと2人を見ている。

キョーコが動揺している間に、コーディネイトは決定していった。パーティーとはいえ企業が開催するもの。取引先のビジネスパーソンがほとんどを占めるため、華やか過ぎるパーティー衣装は浮くだろうと、ビジネスでも着られそうなジャケットとワンピース、それに華やぎを添える小物が選ばれる。靴やバッグまで含めて整ったところで、男2人は部屋から追い出された。

「お前、キョーコちゃんの反応見て楽しんでるだろ」
「…楽しんでるんじゃありません、愛でてるんです」
「おんなじだよ!」
などと2人が会話をしていると、それほど時を隔てずに部屋からテンが出てきた。
「おっまたせーー!うん、かなり控えめにしたけどいい出来よ」
「早いですね」
「そりゃー、ごてごて着飾るわけじゃないしね。ビジネス向けに、メイクもシックだけど…見違えたわよぉ」
テンの言葉に2人が部屋の入り口に目をやると、そこからはキョーコがおどおどと恥ずかしそうに出てきた。
スモーキーグリーンのワンピースに身を包み、普段よりややシャープな髪型とメイクにより、今のキョーコは可愛いというよりきりっとした美人だ。ワンピースはすっきりとしたラインだが、さりげなくつけられたアクセサリが華やかさを添えている。

「わぁ~~~。印象変わるなあ。キョーコちゃん、すごい美人さんだ…」
社が目を見開いて感想をこぼす。
「本当に、すごく綺麗だね」
蓮も素直に賛辞を述べた。

キョーコは2人の言葉を聞いてもまだ恥ずかしげで身の置き所がないような落ち着きのなさをみせていた。その様子を見て蓮が改めて近づいて声をかける。
「どうしたの?」
「いえあの…なんでしょう、テンさんにメイクしていただいたら…なんだかすごいことに」
「ああ、そんなことか。驚く事でもないよ。キョーコの魅力が引き出されただけだから」
「うえ?」
「本当だよ。君はとても綺麗だ。そこまで凛とした美しさが引き出されるとは…予想を上回ったな」
蓮の言葉に、むしろ不安そうな表情でキョーコが首をかしげる。蓮は苦笑すると、姿見の前にキョーコを連れて行った。キョーコが正面を向くと、鏡の中には誰だろう?と思えるほどの自分と、その斜め後ろに柔らかい表情の蓮が映っている。鏡の中の蓮は、両手をそっとキョーコの肩に添えた。

「胸を張って背筋を伸ばしてごらん。その見た目で自信なさげな方が不自然だよ」
「は、はい!」
「そう…君はもともと姿勢がいいからね。…そう。それでいい。あとは、笑顔だ」
「笑顔…ですか?」
「うん。パーティー中は無理にしゃべろうとしなくていい。『有能な社長秘書』って顔で、俺についてきてくれればそれでいいよ」

ああ、それがぴったりだね、と社も同意する。蓮は少しかがむと、キョーコの顔のすぐそばまで自分の顔を近づけた。2人の視線が鏡越しに交わる。
「君は何も恐れなくていい。誰に媚びる必要も、怯える必要もない。俺がずっとついてる」
蓮の柔らかい声が胸に届き、キョーコの瞳に力強い光が宿る。キョーコは深く深呼吸をすると、黙って頷いてみせた。


3人はテンの店を出ると、宿泊するホテルに荷物だけをあずけ、パーティー会場になっている別のホテルへと向かった。タクシーの助手席に座った社は話好きの運転手に捕まり、その話に相槌を打っている。
キョーコは窓の外を流れる景色を眺めながら黙って何かを考えていたが、ちらりと蓮の顔を見た。蓮は窓の外を見ているようだが、その横顔を見ても、キョーコの視線はやはり蓮の唇に吸い寄せられてしまう。

ああ…意識しないようにって思うと、逆に意識しちゃう…!!
だけどだけど、あれっきり蓮さんも何も言わないし…こんなに気にしてるの、私だけ?あれって挨拶とかそんな感じのことなのかしら…

「俺の顔に何かついてる?」
急に声が聞こえてキョーコは思考の渦から現世界へと戻ってきた。気づけば、蓮の顔を凝視したまま思考に突入していたらしい。
「はっ!!いえあの、なんでもありません!!!」
キョーコは慌てて視線を外し、前方に目線をやる。
「キス、したいの?」
ぼそりと小声でつぶやかれた言葉に、キョーコは文字通り飛び上がった。
「ちちちち、違います!!!」
蓮は窓枠に肘をついたままくすくすと笑う。
「なんだ…さっきから俺の口元ばかり見てるから、期待したのに」
「期待って何ですか!そ、そんなこと思ってません!」
「ん、確かに今すると折角のメイクが落ちちゃうし…」
「だから、思ってませんてば!」
ぼそぼそと小声で激しく応酬を繰り広げる2人(プラス1人)を乗せ、タクシーはホテルの車寄せへと滑りこんで行った。

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