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Personal Engagement (15)


こんばんは!

…明日は、5日ですね~~~。ふう。
見ない見ない。聞かない聞かない。ぶつぶつぶつ。

さて、なんとかPersonal Engagementの続きです。
なんだかだらりと長くなりつつありますが、そろそろお話を収束の方向に持っていかなければ…






京都のオフィス街にある先進的なオフィスビル。
高層階の眺めのいい会議室には3人の男がいる。1人は"ひさや"から移ってきた渡辺、もう1人は不破グループで飲食店を展開している不破レストランズの社長、最後の1人は中では格段に若い、茶髪の男だった。

「不破君、こちらが"ひさや"の元副社長だった渡辺さんだ」
茶髪の男がおざなりに頭を下げる。
「どうも、はじめまして。不破尚です」
「渡辺です」

不破…なるほど、新入社員とはいえ、御曹司は特別待遇か…

渡辺は古巣の会社の現社長の顔をチラリと思い出した。しかしあちらは隙無くスーツを着こなし、いささか老成気味の温和な雰囲気をまとっているのに対し、こちらはまだ学生気分が抜けていないような落ち着きの無さを感じる。聞いた年齢は4つほど違うため社会経験の差とも捉えられるが、4年経っても目の前の男はああはならないだろうと思われた。

「渡辺さんに我社においでいただいたのは、不破君の助言もあってのことなんですよ」
「そうなんですか?それは…ありがとうございます」
内部の事情は聞いていなかったため、渡辺は少し驚いた。この若者はどこまで口を出せる権限を持っているのだろうかと瞬時に考える。
「別に…ヒズリグループの内情を知ってる人なら、対抗策も練れると思っただけです」
「不破さん…は、ヒズリグループをライバルとお感じですか?」
尚は鼻で笑った。
「そりゃ、本拠地こそ違うけど、"ひさや"とうちじゃ店舗形態もターゲットもだいぶかぶってますし」
「ふむ…しかし、そういう意味ではこの関西圏でもいくつか有力な競合がありますが」

ごく当たり前な問いかけに、尚は表情を少し険しくすると、じっと渡辺を睨みつけた。
「…あの会社には、恩を仇で返すような奴がいる。恩知らずには思い知らせてやらないと…」
私怨か、と渡辺は内心で笑った。自身も少なからず似たような状態であることは十分に分かっている。
「恩知らず、ですか。不破グループから向こうに移った人間が?」
「いや…正確には、これからうちに勤めてやっと恩返し、てところで逃げ出したんですよ」

渡辺は少し表情を和らげた。
「今年の新入社員ですか…それはそれは。そういえば"ひさや"の社長がちょっかいをかけてるのも新人でしたね」
「は?噂は聞いたけど、あれは本当なのか?とんでもない奴に社長やらせてるな、"ひさや"も…」
バカにしたように言い放つ尚は、すでに敬語すら使っていなかった。渡辺もそれに気がつくが、あえて流す。
「まともな人間なら、そう思いますな」

尚はしばらく黙り込むと、慎重に口を開いた。
「その新人って、最上キョーコって奴じゃあ、ないよな?」
渡辺は目を見開いて驚いた表情になった。
「確か、そういう名前の女子社員だったかと…」
「なっ!マジでか?…キョーコのヤロー…!」

ふん、直情径行な御曹司か…
どいつもこいつも親の威光を笠に着てるのか。…ただ、ヒズリ会長の息子に比べれば、まだこの男の方が単純で御しやすそうだな…
しかし、どうやら不破の御曹司と敦賀の女は知らぬ仲ではないのか?

渡辺は、険しい顔でブツブツと文句を言い続ける尚を冷ややかな表情で見つめていた。



「あの…蓮さん?」
「ん?なんだい、キョーコ」
問いかけに対する答えは、問いを発した人物の隣、ではなく、すぐ後ろ、いや、ほぼ同じ位置から返された。

「今日もお疲れなんですか?」
「いや、今日はそうでもないよ」
「…だったらなんで、この体勢なんですか!?」

口を尖らせたキョーコの抗議も仕方のないことだった。
いつものごとく蓮の部屋。キョーコの手料理を2人で食べた後、どうした成り行きなのかキョーコはソファに座る蓮の足の間に座らされている。後ろから蓮の両腕がぐるりと巻き付いていて、(シートベルトじゃあるまいし)とキョーコはこっそり心の中で突っ込みを入れた。蓮が疲れているときに、癒されるからと抱きつかれるのは半分納得がいかないながらも受け入れたのだが、今日は何の理由があってこうなっているのだろうか。

「なんでって…恋人ってそういうものじゃない?」
「だって、恋人って言っても…」
「契約上だけどね、だからダメってこともないだろう?」
「だって、人前でだけって…」
「人前でだけべったりくっつく事が君にできるならいいんだけど…ガチガチになっちゃうだろう。不自然じゃないか?」
「……」
全て言葉を遮るように返されて、キョーコは赤い顔で黙った。しかし、ううう、と唸りながら考えこみ、やがて思い付いたように声を上げる。
「肉体的接触は無し、て最初に言いましたよ!」
一瞬固まった後蓮は噴き出すと、深く頷きながら答えた。
「…なるほどね。……認識に相違があるようだね」
「なんですか、認識の相違って」
「君の言う肉体的接触ってのは、こういうハグのことを言うのか」
「…接触してるじゃないですか」
「接触してないよ。ほら、服越しだ」
「は??…な、何を仰ってるんですか!?」
「お互いに裸で抱き合う事を、肉体的接触と言うんだと思ってたよ。いや、最初に言葉の定義が必要だったね」
「………!!!」
「んーでも服越し以外となると、キスも肉体的接触になるのかな…そういうつもりじゃなかったんだけど」
「………」
「ぼかさないではっきりとした言葉を使えばよかったんだ、性交渉って。あれ?キョーコ??耳が真っ赤だよ?」
「ぼ、ぼかしてください……」
「そうか、キョーコは未経験か」
「ぐ……」
「大丈夫、最初の契約どおりそんなことは強要しないから」

もうすでに受容限度ギリギリの事を強要されているとキョーコは思っているが、なんとなく馬鹿にされそうでそれは言い出せないでいる。今の発言だって十分すぎるほどセクハラだと思うのだが、キョーコが慌てたり恥ずかしがったりと反応するのをどうも蓮が楽しんでいる節があるので、ぐうっと我慢する事にした。
「大体…蓮さんは言ってる事とやってる事が矛盾してるんです!」
「何が矛盾してるって?」
「好きになられたら困るとか仰ってた割に、2人のときにこうやって…その、くっついたりするじゃないですか。こういうことしたら、普通女の人は誤解して好きになっちゃったりしますよ!そうしたら、困るのは蓮さんじゃないんですか?」

途端に蓮のまとう雰囲気が変わった。目がすっと細められ、片手はキョーコの顎を捕える。
「へぇ…キョーコはこういうことされると、俺のこと好きになるの?」
「な…なりません!」
「君こそ、言ってることが矛盾してるよ?」
「普通は、と申し上げたんです!」
「いいよ」
「はい?」
「好きになっても…いいよ?」

蓮の言葉を聞いて、ものすごいビックリ顔になってしまったキョーコがおかしくて、蓮は半分無意識でキョーコの首元に唇を寄せた。驚かせるつもりもなく、ただ単に可愛くて触れたくなり、軽くキスをしただけだったのだが。

「やんっ」
くすぐったくてゾクリとして、反射的にキョーコの口からもれた声。蓮は真顔で固まり、キョーコは自分でびっくりして瞬間的にゆでダコのように真っ赤になり、ぱふんと口を押さえる。

「…あ…あぁ……ごめんね。つい、うっかり」
「…うっかりって…!」
「ごめんごめん…キョーコみたいな純真さんにしていいことじゃなかったよね。ほんとにごめん」
「いえあの…いいんです」
そのまま、しばしの沈黙がその場を支配する。

……びっっっっくりした!!!
ああもう、なんて声出しちゃったの、キョーコ!は、はずかしいい!!!!
社長、びっくりして固まってたじゃないのよ!でも大体、あんな破廉恥なことするからぁ!!


うっかりした…
しかしあんな色っぽい声、出るんだな…思わず反応しそうに…危ない危ない。
それにしても、思った以上に頑なだよな…だけど、耳は真っ赤だ…


蓮は自分の行動で自分を追い込んだことを少し反省し、空気を変えようと試みた。そして、ふと気になっていたことを聞いてみる。
「そういえば、社さんからチケット受け取ったよね?」
「あ、はい、いただきました」
京都への出発は数日後の週末に迫っていた。どうせ行くなら、とあちこち挨拶まわりをする蓮は前日の内に、キョーコは土曜日になってから向こうへ行くことになっている。
「社さんが少し気にしていたんだけど…キョーコ、あんまり京都には行きたくなかった?」
キョーコは表情を硬くして少し俯き加減になった。無言で、口を引き結ぶ。
「嫌なことを押し付けるつもりはないんだ…嫌ならそう言ってくれていいんだよ?」

キョーコは顔を上げて蓮を見たが、目が合うと慌てて逸らしてしまう。何度か口を開こうと試みて失敗し、ようやく決心したように言葉を絞り出した。

「嫌というか……どうしても、会いたくない人間が、京都にはいるんです」

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コメントコメント


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殴れるものなら

殴っても良いですか?
キョコちゃんを「恩知らず」ってののしった、不破グループの御曹司馬鹿尚を・・・。
自分が何かキョコちゃんに対してしたから、合いたくない っていわれてるんじゃないかしら?
極端に嫌なことを馬鹿御曹司がやったんだと思います。
本当に殴ってやりたいですね。

美音 | URL | 2013/04/04 (Thu) 23:52 [編集]


Re: 殴れるものなら

> 美音様

おおおお、キョコちゃんのために憤ってくださってありがとうございます。
そう、御曹司がガンなんですね。
自覚のないあたりが厄介だと思います。

ぞうはな | URL | 2013/04/05 (Fri) 21:28 [編集]


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| | 2017/02/14 (Tue) 02:03 [編集]