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怪我の功名?


こんばんは!
やっと週末… 今週は4日間だったはずなのに長かった気がします。

さて今日の更新はある意味スキビ二次ではメジャーなネタ。
皆さんが書かれていて大抵は切ない系になったりしてて、私もドキドキしながら読むのが好きなのですが、ちょっと目先を変えてみました。

ではどうぞ~~





芸能人のマネージャーの仕事は、単純に担当芸能人に付いて回って世話を焼くだけではない。いや、むしろそれ以外の仕事の方が圧倒的に多いし大切だ。
この日、俳優・敦賀蓮のマネージャーである社倖一は、蓮とは別行動をして事務所にいた。人気俳優を担当しているだけにマネージャーも多忙であり、スケジュール管理、仕事の取捨選択、体調ケアなどなど、様々な事に神経を配りながら仕事を進めている。

んでも、今日は1日キョーコちゃんとべったり一緒だからな~~~。精神的にはかなりいい状態だろうな。ふふふふふ。
最近素のままでもなーんかいい感じするしなあ。もういっそのこと、そのままくっついちゃってくれないかなー。

社は兄妹に扮している担当俳優とその想い人であるタレントのやり取りを直接見られないのを少し残念に思いながらも、少しでもその仲が進展するようにと願う。優秀なマネージャーは担当芸能人の精神的なケアにまで気を配り、恋愛相談にだって乗る気満々だ。

さて、今日はあと1件打ち合わせか!

社は上機嫌なまま、時計を見て立ち上がった。事務所を出て、駅の方へと歩き出す。タクシーを使ってもいいが、今日は天気もいいし時間にも余裕がある。蓮と一緒に行動するときにはほとんどが蓮の車の助手席での移動になるため、社は少し気分を変えようと、電車での移動を選択した。

事務所を出て、信号が青になったのを確かめて横断歩道を渡りだす。
しかしそこに、信号無視のトラックが突っ込んできて、そして……耳障りな大きいブレーキ音が響いた。



カツコツカツコツ
ぱたぱたぱたぱた

夜の病院、面会時間ギリギリの静かな廊下に2つの足音が響く。
走りはしないものの最大限に急いで歩いていく足音は、まっすぐにある病室へと向かっていた。

ノックに対する返事と同時くらいにドアが開けられる。
「社さんっ!?」
飛び込んできたのは1組の男女。息を切らし、心配そうな顔で部屋を覗き込んだのは長身の俳優、敦賀蓮と、タレントの京子こと最上キョーコだった。
個室の病室の中、ベッドの横に置かれた椅子から1人の男性が立ち上がる。
「ああ、蓮。わざわざすまないな。最上君も一緒に来てくれたのか」
「はい、あの、社さんは」
ベッドに近づきながら、蓮は少し声のトーンを落とした。ベッドの主が横たわり、目をつぶっていたからだ。その後ろから神妙な面持ちでキョーコも近づいてくる。

「うん、幸いな事に事故といっても車には掠ったくらいで済んだみたいで、怪我は打撲と擦り傷だけだ。メガネは壊れてしまったようだけどな。頭を打ってはいるが、検査結果に問題はない」
蓮はほうっと息を吐いて肩の力を抜いた。けれど、と松島が困った顔で言葉を続ける。
「さっきまで起きてもいたんだけどな…どうも、頭を打ったせいか、事故のショックなのか、記憶が混乱しているんだ」
「混乱?」
「うーーん、混乱というか……まあその、はっきり言ってしまうと、記憶喪失というか」
蓮の後ろでキョーコが息を呑む。蓮はかろうじて冷静を保っていた。
「記憶喪失…どれくらい、分からない事があるんですか?」
「ああ…自分が誰だか分からなくて…俺のことも分からなかった」
全部じゃないですか!と蓮が少し声を荒らげる。松島は蓮を慌ててなだめた。
「まあ蓮、落ち着け。主治医の先生が言うことには事故のショックで一時的なものだから、落ち着けば思い出すだろうということだ。脳に障害があるとかそういうことじゃないから安心しろ」
蓮は渋い顔のままベッドで眠る社の顔を見つめる。

「落ち着けばって…どれくらいかかるんですか?」
キョーコがおずおずと尋ねた。しかし、松島は首を横に振る。
「どれくらい時間がかかるかは…分からないそうだ。この状態で1人暮らしの部屋に返すわけにもいかないし、とりあえず数日は入院になりそうだな」
「そういえば社さんのご家族は?」
「ああ、ついさっきまで親御さんが見えてたんだけどな。社はやっぱり分からなくて…また明日来られるそうだ」

松島は気分を変えるかのように話題を変えた。
「蓮、当面の仕事については予定通り、だ。社がかなり先の仕事までスケジューリングしてくれてるから、お前はしっかりこなしてくれ。今後の仕事の調整についてはしばらくは俳優セクションの方でやるからな。明日以降は…しばらくあっちの仕事か?」
「はい。明日と明後日は1日、…カインとしての仕事のみです」
「じゃあまあ、とりあえずは何とかなるな。最上君も頼むな。心配だろうけど、社の事はこっちに任せてくれ」
「はい、わかりました」
蓮とキョーコは松島に促され、後ろ髪を引かれながらも翌日の仕事のためにヒール兄妹が滞在中のホテルへと戻っていった。


その翌日の夜。
前日と同じくらいの時刻に、やはり2人分の足音が廊下に響く。今日は昨日ほどの慌てた様子も無かったが、やがて足音の主は昨日と同じ病室へとたどり着いた。

コンコン

控えめなノックの後に、そろりそろりと引き戸が開けられる。この日は社は起きて雑誌を眺めていて、ノックの音に入り口の方へと目線をやった。
「こんばんは」
蓮が笑顔で声をかける。社は少し困惑した様子で返事をした。
「こんばんは。えーっと、すみません、俺目が悪くて…どなたでしょう?」
「ああ、失礼しました。敦賀蓮です。こっちは同じLMEのタレントの最上キョーコさん」
キョーコが蓮の後ろから姿を見せてぺこりと頭を下げる。2人は部屋に入ると社に断ってベッドの脇に座った。

「ご気分はいかがですか?」
蓮に聞かれて、社は頭をさする。
「ああ、今日は頭痛もかなり引いたし、割と元気です。…そうか、俺は君の担当マネージャーだったんですね…」
社は日中訪れた松島から聞いた話を思い返しながら確認した。しかし、社に敬語で話しかけられると蓮は妙に居心地が悪い。
「俺のほうが年下だし、社さんはいつも俺に気さくに接してくれてましたから、敬語使わなくていいですよ」
「あ…うん、じゃあ、少しずつ。あぁ、それにしても、今日1日で敦賀君をテレビで何回も見かけました。いや、俺がそんな人のマネージメントをしてたなんて信じられないよ」
社は少し緊張が解けたのか、にこにこと話しかけてくる。
「いつも社さんにマネージメントしていただいているおかげで今の俺があるんですよ」
「はぁ~~、どんなことしてたのか、全然思い出せないんだよね」

蓮とキョーコは思わず顔を見合わせる。そして、黙って座っていたキョーコが口を開いた。
「あの…そんなに焦って思い出そうとしなくても大丈夫ですよ、社さん」
社の視線がキョーコのほうへと向く。
「社さん、いつも敦賀さんと一緒にお忙しそうに働いてましたから、少しゆっくりお休みになってください。幸い今日と明日は私が1日敦賀さんに付いていられますし、お任せくださいね」

「あのね最上さん…」
蓮は少し渋い顔になった。
「まるで俺が1人じゃ何もできないように聞こえないか?その言い方は」
「そんなつもりはありませんけど、食生活に関してはそう捉えていただいて結構です」
キョーコも負けずにきっぱりと言い切る。
「俺だって1人でもちゃんと食事ぐらいできるよ」
「放っておいたらろくな物召し上がらないじゃないですか!カイン・ヒールのときはもうなおさらです。進んで口にするのはお酒だけだなんて」
「君はそういうけど今までちゃんと20年以上生きてきたんだよ、俺だって」
「そっちの方が不思議ですけど」

黙って見ていた社だったが、思わず口を挟んだ。
「ま、まあまあ、2人とも、喧嘩しないで。俺のせいで2人が仲たがいなんてことがあったら、俺困っちゃうから」
「はあ…」
2人はとりあえず社に言われてなんとか矛を収める。すると社はへへへ、と笑いながら言った。
「それにしても2人はすごく仲がいいんだね。最上さん、もタレントさんなんでしょ?やっぱり付き合ってるって事は世間的には内緒なの?」

蓮は思いっきり噴出し、キョーコは思わず立ち上がる。キョーコの顔は赤くなるどころか蒼白だ。
「な、な、な、なんてお、恐れ多い事を…!」
えええ?と今度は社が驚いた。
「違うの?だって、すごく仲よさそうだしさ、昨日も一緒に来てくれたって聞いたし…この病室に入ってきてからもアイコンタクトはしてるし、痴話喧嘩はしてるし」
「社さん、もうそのくらいで…」
蓮は困りきった顔で社を止めようとするが、社は止まらない。

「敦賀君なんてもうそれこそ優しい目で最上さんのこと見てるし、最上さんだって同じだよ。それで付き合ってないとしたら敦賀君が意思表示もせずに黙って見てるってことだろう?それは…そんな色男なくせに、敦賀君が余程のヘタレってことにならないか?」
一気に言い切った社に対し、蓮は肩を落としてがっくりとうなだれた。キョーコは事態が飲み込めずに「え?え??」とハテナマークを飛ばしている。

「…もう、だからいつも言ってるだろう、蓮!お前、ちゃんとしないといつキョーコちゃんに馬の骨が現れて掻っ攫われるか分からないって。もういい加減うじうじしてないでさっさとけりつけろよ!」
社の言葉にキョーコと蓮があんぐりと口を開けて社を見た。
視線を感じた社はそのまましばらくたたずんでいたが。

「あれ?俺……ここ、どこ?」



「頭大丈夫なんですか?社さん」
事務所の廊下で声をかけられた社は振り向いた。
「あのさ琴南さん。せめて『もう』とかつけてくれない?」
ああすみません、と表情を動かさずに奏江は謝る。
「今日は敦賀さんは別行動なんですか?」
「うん。俺だけちょっと事務所に用があってね」
「…怪我の功名ってこういうのを言うんですかね」
奏江は少し声を潜めて社に尋ねる。社は苦笑して答えた。
「まあ、そうかもしれないね。俺もよく覚えてないんだけどさ」

社の病室でのひと悶着後、一時的に蓮とキョーコの間はぎくしゃくとしたムードが漂ったのだが、先に耐え切れなくなった蓮の決死の告白により、2人の仲は何とかまとまった。
ある意味社のおかげとも言えるのだが、それ以来、蓮は社の事を恨みがましい眼で見る。

「それで、敦賀さんはキョーコにべったりなんですか?」
「いや…2人とも仕事が忙しいから、なかなか会えてないんじゃないかな?大体そこまでプライベートを把握してるわけじゃないし」
社は冷静に返したが、内心はひやひやしていた。

昨日も2人は同じ部屋で寝泊りしているはずだけど…表向きは兄妹として。
蓮の耐えなくちゃいけない度合いは上がっちゃったよなあ…

付き合い始めたんだから耐えなくても、と社はうっすら思ったのだが、それは蓮の主義には反するらしい。最上さんはまだ未成年だし高校生だし、社長にも一線は越えるなと言われているし、と自分でがっちり枷をかけてしまった。

あいつ…だからBJの仕事の間は意思表示しないつもりだったのかな?
…いやいや、考えすぎか。あいつ単純にヘタレなだけだよな。……撮影が終わるまで、蓮の忍耐がもつといいけど…

忍耐が終わった時点の反動を考えると少し怖い気がするが、社はとりあえずその事は先送りする事にして、今日もマネージャー業務に精を出すのだった。


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