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社外恋愛 (14) ~諦念~

こんばんは!!

学級閉鎖がこわいです~~~。
子供の通う小学校ではすでにはじまってます。

なんとか週末までもってほしい!切実に!

では本日も、「社外恋愛」どうぞ~!
そろそろお話が動き始める…?




時刻は19時20分。
オフィス街の隣の繁華街で、キョーコは居酒屋が複数入居する雑居ビルの前にいた。夕方に入っていた雑誌取材が予想より盛り上がり、変装する時間も必要だったため少し遅れてしまった。

「最近、恋してますか?」なんて唐突に聞かれたからって、あからさまにうろたえるから、ダメなのよね… 遅れて入っていくのって気まずいかな…?

取材を受けたファッション雑誌の若い女性編集者がいきなり恋愛に話題を振ってきたので、うっかり目が泳いでしまった。そこを激しく突っ込まれたためにかわすのが大変だったのだ。取材が終わった時点で社には連絡を入れたが、『9時過ぎまでいるから大丈夫~~。慌てないで来てね』と言われて少しホッとした。

さて。

キョーコはごくりとつばを飲み込むと、小さく古いエレベータのボタンを押した。
今日は、今日こそは、蓮の顔を見て、目に焼き付けて、この想いにけりをつけるのだ。横恋慕なんて、みじめな思いをするだけだ。前向きに、新しい恋愛に気持ちを持っていくためにも、今日を区切りの日としよう。

固く決意をして店の入り口をくぐり、店員に社の名前を告げるとすぐに奥の座敷へと案内される。


「今晩は…遅くなりました」
座敷の入り口から遠慮がちに声をかけると、一番こちら側に座っていた社がすぐにキョーコに気がついてくれた。
「おおー。キョーコちゃん!久しぶりーー。来てくれてありがとうねー。ささ、座って座って」
座敷の細長いテーブルには十数人が座り、すでに会は始まっている。社の向かいには山口と石井がいて、声をかけてキョーコを二人の間に引き入れた。

そして。
キョーコは周りに会釈して座りながら素早く席全体に目を走らせる。


敦賀さん………いた。


蓮はキョーコの向かいの列の奥の方にいた。キョーコがほっと顔をほころばせて蓮を見ていると、蓮もこちらに気がついて、笑顔で会釈をしてくれる。キョーコはそれだけで胸の奥がしめつけられるのを覚えた。しかし、すぐにもっと鋭い痛みが胸を刺す。蓮の隣に座っているのは…逸美だった。


キョーコが来た事で改めて乾杯が行われる。
人数が多い分、テーブルが3つくらいの固まりに分かれて会話が飛び交っているようで、キョーコの位置からは蓮のグループの会話はよく聞き取れなかった。それでも、会話をしながら横目で様子を伺えば、笑いながら会話に興じている蓮の顔はよく見える。
下手に話してしまうより、この距離で眺めていた方が、心臓にはよさそうだ。逸美との会話が聞こえないのも、ある意味では都合がいい。そう思ってキョーコはビールをちびちびと飲みながら、山口や石井達との会話に参加していた。


会はおだやかに進行したが、1時間を過ぎるとだいぶ酒も進み、全体的に調子が上がってくる。キョーコの両隣を陣取った山口と石井は2人ともかなり飲めるらしく、向かいで付き合っていた社の様子が若干怪しくなってきても勢いは止まらない。キョーコも巻き込まれて何杯目かの赤ワインのグラスを前にしていた。

そして、キョーコの正面には社のグループの1人である石橋光がどっしりと座っている。
キョーコもバイト中に仕事での関わりがあったため話をしてはいるが、それほど親しくしていたつもりはない。それなのに今日は妙に馴れ馴れしく話しかけられ、色々と聞かれていた。
キョーコの周りにはがっちりと包囲網が出来上がっているような状態になっている。

ぽつんと話に入れないよりはいいんだけど…なんだろう、もう抜け出す隙もないような…?

実は光はバイト中からキョーコの事が気になっていたのだが、うじうじと遠慮している間にバイト期間が終わってしまったのだ。社からキョーコが参加することを聞き、今日こそは!と意気込んで、ついでに酒の力も借りていた。…酒の力を持ってしても、たわいもない話をキョーコにするのが精一杯だったが。


一方の蓮は普段どおり穏やかな笑みを浮かべ、にこやかに周りと会話をしていたのだが、実はキョーコの方へと移るタイミングを測っていた。折角来てくれたんだから、少しは会話をしたい。なんなら、今後メールを送ってもらえるような口実を作りたい。しかし何回様子を伺ってもキョーコの周りは派遣社員コンビと社と光が固めていて、動く気配すらないのだ。
おまけに自分の隣に座った逸美がかなりのペースで飲んでいて、蓮や周りに絡んできている。「飲めないなんて言わないですよね~~」と、にこやかに、でもかなり据わった目でピッチャーをかかげていて、蓮の周囲は被害甚大だ。

蓮は状況を変えようと一度席を立った。洗面所の鏡に映った自分の顔を見つめてため息をつく。焦りつつも全く動けない自分の滑稽さに苦笑がこぼれた。

何をやってるんだ、俺は1人で…?
大体向こうから話しかけてきたりもしてないのにな。俺は何を期待してるんだか。

キョーコの方は蓮と距離を置いて顔を見るだけにしておこう、と決意しているからこそ、あえて目も合わせないし話しかけもしないのだが、そんなことは知らない蓮にはある意味きつい仕打ちになっていた。キョーコの素性を知っている分、強引に押すこともなんとなく躊躇われる。

頭を振って席に戻った蓮はなんとか光の隣に座り込む事に成功したのだが、ろくにキョーコとは会話ができないまま、また逸美のお酌地獄に連れ戻されていったのだった。


21時を30分ほど回ったところで、店から追い出される形で会は終わった。3月でどこの店も混雑しているため、長居はさせてくれないようだ。しかし、盛り上がった一同は当然のように二次会へとなだれ込むつもりでいた。

「え~~。キョーコちゃん、帰っちゃうの??」
そんな中、社が残念そうな声をあげる。少し顔が赤く、だいぶ酔いが回っているようだ。
キョーコは申し訳なさそうに頭を下げた。
「すみません、私もお付き合いしたいのは山々なんですけど、明日朝がかなり早くて…」
「そうなんだ…残念だなあ~~。よければさ、また仕事と関係なくても飲みに誘ってもいいかな?もちろん、山口さんや石井さんがいるときに皆でさ」
「そう言って頂けると嬉しいです。もちろん、よろしくお願いします」
キョーコは社と山口、石井に挨拶をして、一団と別れる。もちろん、送って行こうか?という光の申し出も丁重に辞退した。いや、辞退するかしないかのうちに光が他の人にひきずられていった。

蓮は少し離れたところで逸美が腕にくっついた状態で他のメンバーに冷やかされながら、二次会に引っぱられて行こうとしている。キョーコはその姿を確認すると無言でそっと頭を下げた。


楽しげに盛りあがりながら去っていく団体を見送りながら、キョーコは肩の力を抜いて息を思いっきり吐き出した。


これで……本当に終わり。

先ほどは社に「よろしくお願いします」なんて返事をしてしまったが、もうこの集まりに顔を出すことはないだろう。キョーコは駅に向かうためにくるりと踵を返す。数歩歩くと、ずきずきと頭が痛んだ。


調子に乗って飲みすぎちゃったかな…ワイン、何杯飲んだかな?ええと……
ああ、ちょっと気持ち悪いかも…


キョーコの足がぴたりと止まる。
体が崩れそうになって、すぐ横に見えたガードレールに腰掛けた。


自分が望んだことよ、キョーコ…
今日は百瀬さんがいて、よかったじゃない。これでさっぱり諦めつくわよ。
分かってたことじゃないの……


3月に入っていたが、夜はまだまだ冷える。特に風が強くなっていて、キョーコの首元を冷たい風が吹き抜けていく。
キョーコはコートのポケットに両手を入れ、肩をすくめ、背中を丸め、ただひたすら足元を見つめてじっとたたずんでいた。


蓮は酔っぱらった逸美に腕を引っ張られて歩いていたが、いきなりぴたりと足を止めた。つかんでいた腕がすっぽ抜けた逸美がバランスを崩し、蓮の後ろをふわふわ歩いていた光が蓮の背中にぶつかり、それぞれ非難の声を上げる。

「わっ。ちょっとーあぶないよーー」
「いてっ!敦賀君、どしたんだよ」

「ごめん、店に忘れ物したみたいだ。ちょっと、先に行っててくれる?」
蓮は出がけに風が冷たかったのでマフラーを巻いて出てきたことを思い出していた。コートと一緒に置いたはずが、誰かの荷物にまぎれてうっかり忘れてきたようだ。

急ぎ足で店に戻ると、ちょうど座敷を片づけている店員が手に蓮のマフラーを持っていた。丁重に礼を言い、マフラーを持って店を出る。ビルの外に出た蓮は、歩道の真ん中に立ち止まると駅への道に目をやった。

最上さん…結構飲んでたような気がするけど、ちゃんと帰ったかな?

結局ほとんど話すことができなかった。途中から目をそらされているような気がして、話しかけることにも躊躇してしまっていた。何か嫌われることをしただろうかと考えてみたが、思い当たる節もない。別に最上さんは自分に会いに来た訳ではない、と自分に言い聞かせ、最終的に蓮はキョーコとの接触を諦めたのだった。

もう会えないかもしれないのにな…でも、最上さんが俺に会いたくないんじゃ……仕方ないよな。

ため息をつきながら、仲間を追いかけようと踏み出しかけた蓮の足が止まった。視線の先にはガードレールに腰掛けて背中を丸め、じっと下を向いて動かない女性の姿がある。

「最上さん…?」

呟いた声は、自分でも驚くほど掠れていた。


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コメントコメント


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こちらのお話

とってもドキドキしながら読んでます!
トキメキスイッチ押されまくりです。
これからも更新楽しみにしてますね。

風月 | URL | 2013/02/01 (Fri) 09:43 [編集]


Re: こちらのお話

> 風月様

お世話になっております~~!
コメントありがとうございます♪

> とってもドキドキしながら読んでます!
> トキメキスイッチ押されまくりです。
> これからも更新楽しみにしてますね。

ドキドキしていただけてるととても嬉しいです。
そして、トキメいていただけてるのも、やったー!
地道に更新していきますのでよろしくおねがいします~~。

ぞうはな | URL | 2013/02/01 (Fri) 22:41 [編集]


初めまして!スキビパラレル大好きなので最近ROMらせていただいております(*^^*)
気づいたのですが、これだけカテゴリー社外恋愛ではないのですが(^-^;

ギロロ | URL | 2013/02/02 (Sat) 21:02 [編集]


ありがとうございます

>ギロロさま

> 初めまして!スキビパラレル大好きなので最近ROMらせていただいております(*^^*)
> 気づいたのですが、これだけカテゴリー社外恋愛ではないのですが(^-^;

ご訪問ありがとうございます!読んでいただけて嬉しいです。

ぎゃあ、ご指摘ありがとうございます。うっかり入れ忘れのようですね。
修正しました~~~。m(__)m

ぞうはな | URL | 2013/02/02 (Sat) 22:35 [編集]