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社外恋愛(1) ~邂逅~


こんばんはー!
松も取れて、平常運転開始、て感じですね。

しかし今日スーパーに行ったら、もう節分の豆が売られていました。ああ、そういえば雛人形のCMもみた気がする…。どんどん日が過ぎていく気がするから、先取りはほどほどにしてほしいものです。




~邂逅~

キョーコはきょろきょろと周りを見回しながら廊下を歩いていた。出勤初日、事前に指示された時刻10分前にホッヅシステムズの受付にやってきたキョーコは、迎えに来た男性に連れられて職場となる部屋へ向かうところだ。

先導するのは迎えに来てくれた、社と名乗った男性。隙なくスーツを着こなしたメガネのハンサムな青年だが、シャープな見た目に反してフレンドリーだったので緊張していたキョーコは少しほっとした。廊下は若干薄暗く、左右に並ぶ扉はすりガラスが入っていて部屋の中を見通す事は出来ないようだ。やがて社は一つのドアの前に立つと、首から下げたカードをドアの横の読み取り装置にかざした。

ピッという小さい電子音とともにドアのロックが解除される。
「あとでカードを渡すから、それまで廊下に出ないでね。締め出されちゃうから」
社に笑顔で言われ、厳重なんだなあ、と思いながらキョーコは社とともに部屋に入った。部屋は広々としていて、白いデスクが並んでいる。キョーコが見慣れたLMEのタレントセクションの机のように山積みの書類があるわけではなく、パソコンと液晶モニタがずらりと置かれているのが印象的だった。

少し・・・パソコンは教えてもらったり触ったりしたけど・・・・・・大丈夫かなあ。

普段の仕事や生活でパソコンに触る機会がないキョーコは、ドラマ主演にあたって事前にパソコンを購入していた。事務所でも操作が得意な社員に色々と教えてもらって、基本的な操作までは覚えてはいたが、ものすごいスピードでキーボードを叩く人たちを見ているとかなりの不安を覚える。

いくらドラマだからって、こういうところがちゃんとできないとリアリティが薄れるもんね…

キーボードを打てるようにならないと、と思いながらじっくりと周りを見回していると、社が笑いながらホルダに入ったカードをキョーコに差し出した。
「はい、これ最上さんの分。こういうオフィス、珍しい?」
「あ、ありがとうございます!…すみません、キョロキョロしてしまって…こういう会社の中って初めて入ったので」
キョーコは赤面しながら答えた。ここにバイトに来た目的がオフィスの雰囲気や社員の生態を知るためだとは口が裂けても言えない。お給料ももらうんだし、バイトとしてしっかりやらなくちゃ!と思いながらぺちぺち頬を叩く。

「ああ、いいよ全然気にしなくて。確かに毎日働いてるとこれが当たり前だけど、学校なんかとは全然雰囲気が違うよね」
「はい…今までのバイト先も飲食店が多かったので」
「そうかー。なんでまた、うちに来ようと思ったの?」
「あの、短期で働く必要がありまして…それと、知らない分、IT企業ってどういうところなのか興味があるんです」
「そうなんだー。知りたいことがあったら俺でも誰でも聞いちゃって大丈夫だよー。さてと、大体揃ってるかな?じゃあみんなに紹介しようか」
言うなり、社は周りに向かって少し大きな声を出した。
「えーっと、ちょっと新しいテスターさんを紹介したいので、集まってくださーい」
作業をしていた周りの十数人ががたがたと席を立ち、なんとなく社とキョーコの周りに半円を作る。キョーコは人垣の中でにょきりと突き出ている頭に気がついた。

なんか、座ってたから気がつかなかったけど1人だけすんごい大きい人がいる…!

じろじろ見るのも失礼だと思い、キョーコは極力そちらに注目しないよう、目の前の人たちの姿をなんとなく視界に入れた。
「今日から1ヶ月、リリース前のテストを担当してくれる、最上さんです。週4日のアルバイトさんなので、よろしくお願いします。じゃあ簡単に自己紹介をどうぞ」
キョーコは慌ててしゃっきりと背筋を伸ばす。
「は、はじめまして、最上と申します。ご迷惑をおかけするかもしれませんが、今日から1ヶ月間、よろしくお願いいたします」
背筋を伸ばしたまま、深々とお辞儀をし、顔を上げるとなぜか上からの視線を感じた。先ほど気になった、背の高い男性からの目線のようだが、じろじろと見られている気がする。周りから「よろしく~」の声とともにぱらぱらと拍手が聞こえ、そのまま解散となりキョーコはほっと息をついた。

社はそのままキョーコを席へと連れて行った。
「ここが最上さんの席。作業に必要なパソコンなんかは用意してあるけど、やり方はこれから説明するから。俺の席は斜め後ろね。で、君の後ろにいるのが敦賀っていう社員。おい、蓮」
「はい」
くるりと振り向いたのは先ほどの背の高い男性だ。キョーコはその顔を正面から見てびっくりした。先ほどは見ないようにしていたので気がつかなかったのだが、社以上の、まるで彫刻のように整った顔。さらさらの黒髪に深い光をたたえた黒い目がキョーコの顔を正面から見ている。芸能界と言う世界に身を置き、日本でトップレベルの容姿を誇る俳優たちと日常的に顔を合わせているキョーコから見ても、この男の容姿は見たことがないくらいレベルが高かった。
なんでこんな人が普通にサラリーマンをやってるんだろう、と思いながらキョーコは蓮の顔をまじまじと見つめてしまった。

キョーコの驚きに気づかないまま社がキョーコに紹介する。
「こいつが敦賀蓮。うちのグループのメンバーで、最上さんにテストしてもらう部分の設計開発担当だから、おかしなところがあったらガンガン言ってやってね」
「敦賀蓮です。よろしく」
「あ、最上キョーコです。よろしくお願いします!」
にっこりと挨拶されて、慌ててキョーコも頭を下げる。礼儀正しく深々とお辞儀をしたため、蓮の眉間がぴくりと動いたことにはキョーコは気がつかなかった。

蓮はそのまま会釈をすると、再び椅子をくるりと回して自分のモニタに向き直った。
後ろでは社がキョーコに他のメンバーを紹介している。蓮は少しだけ頭を向けてその様子を目の端に収めながら、普段どおりの無表情な顔の下でこれ以上ないほど激しく動揺していた。

やっぱり…どう見ても、タレントの京子…に見えるんだけど…まさか、他人の空似って奴なのか?

先ほどの自己紹介のときにあまりに驚いて、蓮はキョーコを凝視してしまっていた。慌てて目を逸らして気持ちを落ち着けたものの、再び目の前に現れたキョーコをもう一度じっくりと見つめてしまった。どうやら向こうも蓮の顔を凝視して何かを考えていたらしく、こちらが見つめていたことには気がついていなかったようだが、まさかこんなところに芸能人がバイトで来る訳がない、と自分で自分を納得させた矢先に、相手は"最上キョーコ"と名乗ったのだ。

俺が本人だと思うほどそっくりな上に、"きょうこ"という名前…どういうことなんだ?

周りは社も含め、一切そんなことは考えていないように思える。似てる、ということさえ誰も思いつかないという状態を蓮は若干腹立たしく思った。確かに目の前にいいるキョーコは黒いセミロングの髪をバレッタで一つにまとめ、グレーのスーツを着ている。顔はうっすらと控え目に化粧をし、京子の素顔よりも若干大人びて見える。わざと目立たないように抑えた装いとも受け取れた。素の京子とも、京子が今までに演じた役柄の外見のどれとも似てはいない。

だけど。だけどそれでも。
どう見ても、蓮の眼には朝のCM映像に出ていた天使と悪魔と同一人物にしか見えないのだ。蓮は理屈ではそんなことがある訳がないし、こんなところに来る理由がない、と思いながらも、自分の直感の部分でどうしても最上キョーコが京子であるという推測を完全に否定することができず、堂々巡りの思考がもたらす混乱の中にいた。


キョーコのバイト初日の午前中は、社から仕事に必要な事柄の説明を受けるだけで終わってしまった。過去に経験があるファーストフードや居酒屋、新聞配達の経験など微塵も役に立たない仕事内容に、キョーコは若干オーバーヒート気味だった。

昼休みのチャイムが鳴り、周りが一斉にガタガタと席を立つ。キョーコは隣の席の女性2人に誘われて、下層階にあるカフェテリアへと向かった。トレイを持って列に並び、きょろきょろと見回しながら食事を始める。キョーコにとっては初体験だらけ、興味深いことだらけで一向に落ち着かない。

食堂の形式は…テレビ局のとあんまり変わらないけど…規模が大きいし、いる人たちの雰囲気が全然違うんだーーー!

物珍しそうに周りを見回しながら昼食をつつくキョーコを見て、同席の女性2人はくすくすと笑っていた。
「キョーコちゃん、朝からずっと落ち着かないわね」
1人が笑いながら声をかける。
「あ、すみません、山口さん…ついあれこれ気になっちゃって」
「1週間もすれば当たり前になってくるよ」
山口ともう一人の女性、石井は派遣社員としてここで数ヶ月前から働いているらしい。キョーコにオフィス内の細かいことを教えてくれて、だいぶ打ち解けてきていた。

「慣れますか?もう朝から分からないことだらけで熱が出そうです」
「慣れる慣れる。あ、でも、敦賀さんだけは慣れないよね」
「そうそう。慣れない慣れない」

敦賀さんって…後ろの席の人だよね?

今日だけで10人以上のメンバーを紹介されているので、なかなか顔と名前が一致しない。キョーコは考えながら口を開いた。
「敦賀さんが慣れないってどういうことですか?」
「ほら、よく美人は3日で飽きるとか言うじゃない?」
「ああ…はい」
「敦賀さんは何日経っても飽きないし…ちょっと微笑まれるだけでいまだにドキドキしちゃうのよねー!」

なるほど、そういう意味か、とキョーコは納得した。発言した山口だけではなく石井も激しく頷いていることから、あの男性が職場内の女性にかなり人気なことが分かる。

すると山口は箸を持ったまま、急にまじめな顔になるとぐっとキョーコの方に身を乗り出してきた。
「でもね、キョーコちゃん。先に教えておいてあげる」
「なにをですか?」
「敦賀さんね、彼女がいるんだって。だから狙っても無駄らしいよ~」
「まあ…あれだけ人外の美しさだと、いない方が不思議ですよね」
人外って、と顔を見合わせて2人は笑う。
「キョーコちゃんって言うこととか面白いよね~~。敦賀さんにも冷静に対処してるしさ」

そうですか?とキョーコは首をかしげた。確かに見た目の美貌はすごい、と思ったが、人間それだけではない。そもそもキョーコの環境では見た目のいい俳優など、毎日のように顔を合わせている。中身が軽かったり、スタッフに対して横柄な態度をとる人物がいることも知っている。

そうよ。単に顔がいいからってちやほやされて、いい気になってる奴だっているんだし!そんなことじゃ騙されないんですからね!


キョーコの脳裏に憎らしい幼馴染のミュージシャンの顔が浮かび、キョーコはそれを打ち消すように八つ当たり気味に食事をかき込むのだった。


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コメントコメント


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はじめまして!!

ぞうはな様、初めてコメントさせていただきます。
みつると申しますm(_ _)m(深々)

いつも楽しいお話をありがとうございます!
今回も「社内恋愛」どう展開していくのか、ワクワクしてます。
キョコちゃんレーダー標準装備な蓮君が可愛いです。

これからも無理せず楽しくお話書いてくださいませ。
みつる拝

みつる | URL | 2013/01/09 (Wed) 00:23 [編集]


Re: はじめまして!!

みつる様

コメントありがとうございます!

> 今回も「社内恋愛」どう展開していくのか、ワクワクしてます。
> キョコちゃんレーダー標準装備な蓮君が可愛いです。

ワクワクにこたえられるように頑張りますね~~。
ふふふ、実は「社外恋愛」だったりします。蓮さん、すでにレーダー感度良好です。

> これからも無理せず楽しくお話書いてくださいませ。

お気遣いありがとうございます。
ぼつぼつ載せていきますので、遊びに来てくださいね!!

ぞうはな | URL | 2013/01/09 (Wed) 18:24 [編集]