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塔の上のキョーコ【リクエスト】(後編_2)

こんばんは!
メリークリスマス!&キョーコちゃん誕生日おめでとーー!

最後の一話を残して更新が空きまして、申し訳ありませんでしたー。

イベントやら子供の発熱やらでばったばたしておりました。
さて、うさちゃんtb様からのリクエスト、最後の一話です。

あ、甘い部分が少ない…ですが… 無事、終わることができましたー。

甘さ的にどうか(<-こだわる)も含め、皆さまのご意見をお寄せいただければ幸いです。
ではどうぞ~~。




しばらくの間口づけをかわしていた2人は、かなり経ってからようやく顔を離しました。キョーコはとろんとした目でクオンを見ていましたが、やがて正気に戻ったのか急に目をぱちくりさせるとその顔は一気に真っ赤になりました。その様子を優しい目で見つめていたクオンは、口を開きます。
「キョーコちゃん。俺は君と離れて、痛感したんだ。いつの間にか、俺の人生に…君が欠かせない一部になっていたみたいだ。ここに帰ることばかり夢に見ていた」
「私だって…ずっとレン様が帰ってくるのを待ってました。レン様のお陰で、私、1人でこの塔から降りて暮らせるようになりましたけど、生活は満ち足りていたはずなんですけど、とても大事なものが足りなかったんです。今、レン様の顔を見ただけで、それが一気に満たされたんです…」

キョーコの言葉を聞いて、クオンはとてもとても嬉しそうに笑いました。堪え切れずにあふれてくるような笑みです。キョーコは、その笑顔を見ただけでなぜか胸がいっぱいになる思いでした。
「キョーコちゃん…キョーコちゃん。俺たちは、離れている間、もしかしたらお互いにお互いを求めていたのかな?そうだとしたら、こんなに嬉しいことはないよ。ねえ、もう待たせないから。いや、もし待たせることになったとしても、絶対帰るという誓いをしたいから。これからずっと、一緒にいてくれないか?」
「ああ…ありがとうございます、レン様。私も、レン様と一緒にいたいです。私がずっとずっとここで待っていたのは、レン様だったかもしれません」

2人がもう一度しっかりと抱き合うと、すぐ横の塔から地鳴りのような低い音が聞こえてきました。段々と大きくなる音と、微かに足元から伝わる振動に、クオンはキョーコの手を引いて塔から急いで離れます。
塔から離れた場所で二人が塔を見上げると、急に目もくらむような閃光が二人を襲いました。クオンは咄嗟に覆いかぶさるようにキョーコを抱きしめ、自分の体を盾にするように背中を塔に向けます。

次の瞬間。
ドーーーーーン!という落雷のような大きな音が鳴り響きました。二人は抱き合った姿勢のまましばらく固まったようにじっとしていましたが、やがてあたりを静寂が包み、それ以上の音も振動もなくなったため、そろそろと顔を起こしました。
二人が同時に塔へと視線をやると…なんと、ずっとずっとそびえたっていた塔は跡形もなくなくなっていたのです。塔があったはずの場所には、塔の上に乗っかっていた小屋が、まるで昔からそこにあったかのようにぺったりと地面に貼りついています。塔を作り上げていたのは大量の石だったはずなのですが、あたりには小石のかけらすら見当たりませんでした。

クオンは何が起こったのか理解ができずしばらく辺りを見回していたのですが、ふとキョーコの顔を見てみました。すると、キョーコもクオンと同じような、呆然とした表情をしています。
「キョーコちゃん……これは一体?」
「わ…たしにも……何が何やら」

二人は恐る恐る小屋に近づき、中に入ってみることにしました。地面にしっかりと建っている小屋なのに、玄関もなく窓から入るのは変な感じです。小屋の中は、塔の上にあった時と何一つ変わっていないようでした。棚や机の上に置かれていたものも落ちるどころか倒れてもいません。
「不思議なこともあるものだな…」
中を見回しながらぽつりとクオンが呟くと、キョーコが驚いたような声を上げました。
「あっ。ロープが…なくなってる!」
クオンが振り向くと、確かに窓の横のフックには何もかかっていませんでした。つい先ほどキョーコが塔から降りるときには確かにそこにひっかけて、窓から垂らされていたはずです。クオンは顎に手を当てて、ふむ、と考え込みました。

塔が消えたタイミングが…俺たちに関係があるとすると…?

「キョーコちゃん」
それ以外考えられない、とクオンは結論を出すと、キョーコに呼びかけました。
「はい!」
他に変わったところがないかあれこれ探っていたキョーコがこちらを向きます。
「これは…もう君が、ここで1人で待っている必要はなくなったってことではないかな?」
「え、私ですか…?」
「うん。この塔は、君が待ち望んでいる人を除いては、登ることも拒否するようにそびえたっていた。君が…俺をその待ち人だと思ってくれて、君と俺が同時に一緒にいようと強く思ったから塔が消えた…それで辻褄があうような気がしないか?」
「そんなことがあるんでしょうか」
「俺にも本当のところは分からないんだけど。ああいや、俺が都合のいいように解釈したいだけかもしれないね」
2人の会話はそこで途切れました。なぜなら、窓の外に村長を始めとする村人の姿が現れたからです。彼らは村まで響き渡った轟音に驚いて様子を見に来たのでした。

クオンの無事の帰還を喜び、塔の消失を驚く村人たちに一通りの説明をし、2人がようやく落ち着いたのは夕方になってからでした。単なる村はずれの一軒家になってしまったことを心配して、その日クオンはキョーコの小屋へ泊りこむことにしました。2人は隣同士のベッドにもぐりこみ、なんとなく緊張しながら言葉を交わします。
キョーコは薄明かりの中でクオンの姿を見ながら、つい先ほどの事を思い出していました。夜着に着替えようとクオンがシャツのボタンをはずした時に、肩の包帯が見えたのです。キョーコは思わず声をかけたのですが、クオンは気にした風もなく「軽い傷だしもう治りかかってるから」と笑ったのでした。

クオン王子も肩に傷を負ったって新聞に書いてあったわよね…

クオン王子は負傷をまったくものともせずそのまま指揮を執り続けた、と新聞にあったことをキョーコは覚えていました。偶然の一致に不思議な感覚を覚えながらも、自分の想い人も怪我をするほど危険な場所にいたのだ、とぞっとする思いでもありました。

思考にふけってぼうっとしていたのでしょう。「キョーコちゃん?」というクオンの声にキョーコははっと我にかえりました。
「あっ。すみません…なんでしょうか?」
「うん……この村にずっと暮らしている君には言いにくいんだけど…都についてきてもらう訳にはいかないだろうか」
「都にですか?」
「そうなんだ…俺がその、仕事の都合上、どうしても都に住んでなくてはいけなくて…ここに通うことも考えてはみたんだけど、やはり……」
言いにくそうに言葉を選ぶ姿がいつもの頼もしい態度と違って見えて、キョーコは思わず笑みをもらしました。
「私は、レン様がいてくださればどこにだってついて行きます。…ああでも、私こんな田舎女ですから、都になんか行ったらレン様に恥をかかせてしまうかもしれません…どうしましょう」
「いや、悩みがそれだけなら俺は安心したよ。恥なんて、そんなことないし、考えなくて大丈夫。もう両親にはキョーコの事を少し話してあるんだ。2人とも大歓迎だったよ」
「ええっ。そんな、一体何をお話しされたんですか!」
「え?いや色々と」
…ともかくも、クオンはキョーコを都に連れていくことについて、OKをもらうことに成功したのでした。

キョーコの都への移動は、慌ただしくも2人の再会の2日後になりました。
一度都へ戻ったクオンが今度は自ら荷馬車を操って戻り、キョーコの荷物を積みこんでいよいよ旅立ちの時です。仲良くなった村人たちに別れの挨拶を済ませ、長い間暮らした小屋にぺこりと挨拶をすると、キョーコはクオンと隣り合って馬車の御者台に乗り込みました。
馬車は順調に都への道を進んでいきます。キョーコの住んでいた村は都からそれほど遠くはなく、日が暮れる頃には辿り着ける予定です。
「レン様のおうちは、どんなところなんですか?」
それまで一切知らされていなかったので、キョーコは少し緊張気味に聞いてみました。今まで、住まいの話、家族の話、仕事の話とも、なんとなくはぐらかされてきていた気がします。
「ああー……うん…着いてみれば、分かるよ」
心なしかクオンの目は泳いでいます。それもそのはず。クオンはすっかりタイミングを逸してしまって、自分の身分を打ち明けないままキョーコを都へと連れ出してしまったのです。かといって、今さらここで「実は」と話すのも、あまりに間が抜けている気がします。

実際に見てもらって…理解してもらうか………怒るだろうなあ


やがて馬車は国の都へと到着しました。頑丈な城壁が街の周りをぐるりと取り囲んでいます。城門をくぐりぬけ、馬車は真っ直ぐに街の真ん中にある王城へと向かって行きます。キョーコが不思議に思う間もなく、馬車は城の裏門を抜けて進み、王宮の脇に止まりました。

「レン様…ここ、あの、私の知識不足でしょうか、王様のお城に見えるんですけど…」
「うん、あってるよ。ここは王城だ」
「なぜ…お城に?」
「…ここ、俺の家」
「………」
何を言っているのか分かりません、と言わんばかりの困惑顔のキョーコを馬車から下ろすと、そのままクオンはその腰を抱いて宮殿の中へとエスコートしました。

豪奢な廊下を進むキョーコの足取りはよろよろとぎこちなかったため、クオンはまずちゃんと落ち着いて話をしようと、自室にキョーコを導きました。しかし、クオンの部屋のドアを開けると、そこにはクオンの父親、つまりは国王であるクー・ヒズリが待ち構えていました。
そして、開口一番、
「クオン!供も連れず荷馬車で行くなど、心配したぞ!!おお君がキョーコか!うんうん、話に聞いていた通りキュートだな。クオンをよろしく頼むな!」
と満面の笑みで一気にまくし立ててしまったため、パニックに陥ったキョーコをなだめ落ち着かせ、腰が引けて逃げ出しそうになるのを押しとどめ、事情をすべて説明する頃には夜中になっていたのでした。

キョーコはぐすぐすと涙ぐみながら恨みがましい目でクオンを見ます。
「レン…いえ、クオン様。もう、隠してることはないですね」
「ない。これで全部だよ…っと、あと一つあった」
「まだあるんですか!?」
「あ、いや大したことないよ。この髪と瞳の色も本当は違うってだけ」
「はい?」
ちょっと待ってて、と部屋を出て数分後に金髪碧眼で戻ってきたクオンを見て、キョーコは目と口をまん丸にしました。
「…お、王子様みたい……」
「いやみたいじゃなくて俺一応王子だから」
「……」
「黒髪黒目の方が好き?」
「もう驚くことが色々ありすぎて……考えられません。でもどっちでもビックリするほど格好いいのは変わりませんし、どっちでも私がクオン様の事をお慕いしているのも変わりません………ってクオン様!ぐるじいでず~~~~」
クオンは愛しさのあまり思わず力いっぱいキョーコの事を抱きしめてしまったのでした。


それから2ヶ月後のある日。
ヒズリ国の王都はいつになく沸きたっていました。今日は国王と王妃の一人息子であるクオン王子の婚礼が執り行われるのです。
クオン王子は隣国の戦での活躍で、今まで以上に人気が高まっていました。近隣諸国の王女や国内の貴族の娘達がどれほどその妃の座を望んでいたことでしょう。お妃になる女性がどんな人なのか、ほとんど情報はありません。ただ、王子が旅先でその女性に惚れ込んで連れ帰った、ということだけが伝わっていましたので、人々は興味津々でパレードの行われる沿道に詰めかけていました。

王宮の一室では。
白の礼装に身を包んだクオン王子がソワソワしながら隣室の扉が開くのを待っていました。白い服と金と黒で統一された装飾がクオン王子の秀麗さを引き立てていますが、本人は自身のことなどどうでもいいようで、ちらちらと何度も扉に目をやります。

やがて、扉がかちゃりと音を立てて開きました。
クオンが慌てて扉に近づくと、中からは白いベールをまとい白いドレスに身を包んだ愛しい女性が姿を現しました。クオンはその清楚な姿を見た瞬間、息を呑みました。この2ヶ月間、正装して美しく変身したキョーコを目にした機会は一度ではありませんでしたが、今日の美しさはまた別格です。
「ああキョーコ…すごく綺麗だね。国で一番の花嫁さんだ。パレードになんて出たら……国中の男たちに嫉妬されてしまう」
クオンはあっという間にキョーコをその腕の中におさめていました。周りには仕度を手伝ってくれた女官たちやクオンに付き添っていたヤシロなどたくさんの人がいるのですが、まったく目に入らないようです。

「クオン様、それは私の台詞ですよ。国中の女性たちに私はもう嫉妬されてます」
クオンとは違い、周りを気にして上目遣いで恥ずかしそうににらんでくるキョーコの表情もまたクオンの気持ちをくすぐりました。好きな子をもっといじめてしまいたい、という子供のようないたずら心がどうしても湧いてしまいます。
「大丈夫、いつものように俺達が仲のいいところを皆に見せてあげればそんな心配要らないよ」
言いながら、クオンはキョーコをふわりと抱き上げると、大きく空いたその鎖骨あたりにちゅ、と音を立ててキスを贈ります。周りの人々が慌てて気まずそうに目を逸らしたのを見て、キョーコの顔は真っ赤に茹で上がってしまいました。

「い、いつものようにって…どういう意味ですかあ!」
「なんで?仲いいのはいつもの通りじゃないの?」
クオンはキョーコを抱きかかえたまま、首にも唇をつけます。
「クオン様ーーー!」
キョーコの絶叫とクオンのくすくす笑いが響き渡り、その文字通り仲良しな様子に、ヤシロはざあざあと砂を吐き、女官たちも熱くなった自分の顔をぱたぱたと仰ぐのでした。


聖堂での厳粛な結婚の儀式が滞りなく終わると、沿道で待ち構えていた民衆の前に白い馬に引かれた馬車に乗った王子とその妃の姿が現れました。抜けるような青空に2人を祝福する色とりどりの花びらが舞い、音楽が鳴り響きます。2人はぴったりと寄り添い、王子の腕は妃の体にしっかりと回されていました。並んだ二人の姿は、まさに王家の婚礼としてこれ以上ないくらい様になっています。

人々は王子にも負けない妃の美しさ、身にまとった純白に似つかわしい清楚さ、少しはにかんだような愛らしい表情に釘付けでした。にこやかに手を振りながら、時折お互いに目を合わせ、何かこそこそと耳元で囁き合い笑いあう様子から、お互いにお互いを想いあっていることが嫌というほど伝わってくるのです。パレードが通り過ぎた後、人々は二人からの幸せオーラに酔わされ、かつ、口の中がじゃりじゃりするような気持ちを味わいながら、立ち尽くすのでした。

結婚式が終わっても、玉のような子供が生まれても、二人の仲の良さはずっと変わりませんでした。
そしてクオンが国王に即位してからは、国民のために尽くす王と王妃として、またよき夫婦の見本として、二人はヒズリ国を立派に治めたのでした。

(おしまい)


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