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策士は誰?


こんばんは!

長編を一気に読んで一気に拍手をつけてくれた方、ありがとうございました!
すんごい読んでもらってる!!!てめちゃくちゃうれしいです。


今日は、リクエストに手をつけ始めたのですが…書き途中のテキストファイルを会社に置いてきてしまいました。
ので、急きょ思い付き短編です。





11月某日。

LME本社のカフェスペースで、最上キョーコはテーブルに開かれた雑誌を凝視したまま腕組みして考え込んでいた。
親友に目撃されたら怒られそうな形相で、眉間には深いしわが刻まれている。ふと思いついたように人差し指が宙をさまようが、「やっぱり難しいなあ…」と肩を落とす。

「どうしたの?」
何回か似たような動きを繰り返したところで、いきなり至近距離からかけられた声に飛びあがらんばかりに驚いた。
「きゃあああ!って、敦賀さん!!」
おはようございます、と礼儀正しく挨拶をしてから、開かれた雑誌のページに気がついて隠そうとするが時すでに遅し。蓮は横から覗きこみ、にっこりと笑った。
「俺の写真を見て、何を悩んでいたのかな?」

キラキラと無駄に光る笑顔からキョーコが逃れることは、叶わなかった。


「今からバースデープレゼントって、随分早目だね」
蓮とともにキョーコのテーブルに着いた社が話を聞いて感想を漏らした。
「これ、忠実に再現しようと思ったら結構時間がかかりそうなのと…24日当日はマリアちゃん、お父さんの所に行ってしまうので、早目に渡そうと思いまして」
キョーコが悩んでいたのは、マリアのバースデープレゼントについてだった。たまたま事務所でマリアに会ったキョーコは、リクエストがあるか聞いてみたのだ。そうしたら、前から決めていたかのように答えが返ってきた。

「蓮様人形の、着せ替えお洋服が欲しいんですの!」

キョーコがマリアに蓮人形をプレゼントした時、何着か着替えもつけていたのだが、外行きの洋服だけではなくカジュアルなものも欲しくなってきたのだと言う。家でくつろいでいるような、ラフでいて蓮らしいおしゃれな洋服が欲しい!という主張とともに、どこに用意していたのか、キョーコの前にはいつの間にか雑誌が広げられていた。

「このニットなんて、すごくいいと思うわ!」
うきうき顔でマリアが指差した先には、少し余裕のあるシルエットのニットをシャツの上からざっくり着た蓮がいた。確かにくつろいでいる時に着ていそうなニットだったのだが。


キョーコはマリアとのやり取りを思い出して、ふー、とため息をつく。
「一応、必ずこれとは言わないけど作る、と約束したんですけど…」
「キョーコちゃんが作った人形の洋服、ほとんど本物と同じように見えたけど、あんなの作っちゃうキョーコちゃんでもこれは難しいの?」
社が驚いたように、雑誌を見ながら言った。
「他の服は、似た生地を探して縫えばいいんですけど、ニットの場合編まなくちゃいけないんです。網目の大きさも人形に合わせて小さくしないと、着せたときの印象が全然違っちゃいます。このニット、案外ゲージが細かいんですよね」

この子は…極めるとどこまでも突き詰めちゃうんだなあ…

蓮は自分の人形の洋服に深く悩むキョーコを見ながら実感した。その集中力を自分に向けてくれたらいいのに、などと思ってしまうが、今はそんなことを言っている場合ではない。蓮はひとつ、キョーコに確認した。
「この写真のニットじゃなくてもいいの?」
「はい、マリアちゃんの欲しい雰囲気は分かったので、これじゃなくてもいいんですけど…」
「じゃあさ、ひとつ提案があるんだけど……ああ、でも、それじゃ最上さんの負担がすごく増えちゃうかな」

キョーコは目を輝かせて身を乗り出した。
「提案って何ですか?多少の負担なら大丈夫です!聞かせてください!」
「ほんとに?でも最上さんも忙しいんだから、大変そうだったら無理しないでね?」
そう断ってから、蓮は提案の内容を話し始めたのだった。


12月中旬。

LME本社の打ち合わせスペースに、キョーコとマリアは向かい合って座っていた。
キョーコの手には、可愛らしいペーパーとリボンでラッピングされた小ぶりな包み。
「結局、あの雑誌のニットではなくなっちゃったんだけど…」
「いいえ!お姉さまの手作りで愛情がこもっているものでしたら、とてもとても嬉しいですわ!」

包みを手渡されたマリアは上機嫌でそのリボンを解き、中身を取り出した。
中から現れたのは、ダークグレーのYシャツと、オフホワイトのざっくりとしたニットのセーター。おまけにジーンズまでついていた。もちろん、サイズはマリアが持っている蓮の人形にぴったりだ。

早速持参した人形にニットを着せたマリアは、人形を抱きしめると感動に震えている。
「あぁ、まるで蓮様のプライベートタイムに一緒にいるみたい…!お姉さま、ありがとう!」
キョーコはマリアに気に入ってもらえたことにほっとして笑みをこぼす。

「でも…」
マリアが首をかしげてキョーコを見た。
「蓮様がこういうニットを着ているところ、見たことないんですけど、蓮様のワードローブにあるものなのかしら?」
キョーコは頭をかきながら恥ずかしそうに答える。
「実はそれ、私のオリジナルなの。だから、今まで敦賀さんが着たことはないんだけど…」

ちょうどその時、噂の主がパーティションの陰からひょっこりと顔を出した。
「やあ、マリアちゃん、こんにちは。最上さん、遅れてごめんね」

「敦賀さん、お疲れ様です。わざわざありがとうございます」
「蓮様!」
マリアはぱっと輝く笑顔になって立ち上がったが、パーティションから出てきた蓮を見て驚いた表情になった。
「蓮様…そのニット!」

「うん、これ、最上さんがその人形のと一緒に編んでくれたんだ」
蓮はダークグレーのYシャツとオフホワイトのニットを着ていたのだ。
「素敵!今まさに蓮様が着てる服と、おんなじだわーーー!」
マリアは人形を抱えて小躍りしている。そこへさらにキョーコが追い打ちをかけた。
「それでね…人形用の毛糸が残ったから、マリアちゃんにと思ってこんなものも作ってみたんだけど」

キョーコから差し出されたのは、オフホワイトのニット帽だった。
女の子らしくポンポンが付き、綺麗な模様編みがされている。

「きゃーー!蓮様とおんなじですわ!」
マリアは大喜びで、キョーコに抱きついて「お姉さまありがとう!!」と喜びを爆発させたのだった。


マリアが去って行った後、打ち合わせスペースには蓮とキョーコが残された。

「最上さん、お疲れ様。よくこの期間で両方仕上げたね」
「いや、始めちゃえば割とスムーズにいきました。でも、マリアちゃんに喜んでもらえてよかったです!」
「そうだね…俺も役得だな。最上さんの愛情がこもった手編みのセーターが着られるなんて」
「ま、またまた… あの、マリアちゃんにお願いされた時以外は無理して着なくていいですからね」
「そんな勿体ないことしないよ…しかし最上さん上手だね。市販のものよりよほど出来がいいよ」
「お褒めにあずかり光栄です…」
「あのマリアちゃんの帽子も可愛く出来てたね。…でも、俺は最上さんとお揃いが出来たら、もっと嬉しいんだけど?」
蓮に笑顔で覗きこまれて、キョーコは妙に慌てた。
「そそそそんな、恐れ多いことは…!」

そこへ社が顔を出す。
「蓮!終わったか?そろそろ移動しないと」

そうですね、と立ち上がった蓮にキョーコは深々と頭を下げた。
「本当にアイデアから何から、ありがとうございました!」
「いやこちらこそ。暖かいセーターをありがとう」
去っていく蓮と社の後ろ姿をしばらく見送ってから、キョーコは傍らに置かれた紙袋に視線を落とす。中から大切そうにそっと取り出したのは…オフホワイトのマフラーだった。

敦賀さんのセーターの毛糸が少し残ったから…自分のを作っちゃった。
これくらいのお揃いなら…いいよね?

そして、マフラーを巻くと、自分も次の仕事に向かったのだった。


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コメントコメント


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可愛いキョーコちゃん。

今晩わ。またしても以前書かれたお話を読んでハッピーな気分になり、調子に乗ってコメントを書いてしまいました。このお話も、ほんわか幸せな気分になります。マリアちゃんも、キョーコちゃんも嬉しそう。しかし、一番嬉しいのはまんまとキョーコちゃんに手編みセーターをもらった蓮様ですね。そんな策を講じなくとも真正面からキョーコちゃんに告白して、恋人になりなさい!って私なら言いたいところです。でもこれは奏江的、あるいは一般人的発想でしょうか。楽しいお話をどうもありがとうございました。あ、コメントのお返事をいつもいただけて、とても嬉しいです。が、ご無理のない程度になさってください。余計なことかもしれませんが、お話も書いていらっしゃるのに、大変だろうと思いました。

Genki | URL | 2013/12/21 (Sat) 00:11 [編集]


Re: 可愛いキョーコちゃん。

> Genki様

こちらもコメントで感想をいただけるのが幸せなんですよー!いつもありがとうございます。
キョコさんも蓮さんも単純に奥手なだけではなく内に痛みや問題を抱えているのがなかなかあっさりと行かない原因なんですよね。社さんやモー子さんから見たらもどかしいことこの上ないのですが。

ぞうはなは、恋愛をしないと不幸だ、とは思わないのですが、キョコさんも蓮さんもお互いの存在が支えや喜びになっているので、ぜひとも幸せにまとまってほしいものだと思います。

ぞうはな | URL | 2013/12/22 (Sun) 07:56 [編集]