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おしえてくれたこと (5)

今日もご訪問、ありがとうございます!
11月最終日ですねー。

たくさんの拍手をどうもありがとうございます。
読んでいただいてるんだなぁ、ととても励みになって嬉しいです♪

さて、ぼの様リクエストのお話、5話目です。
リクエストなのに妄想が膨らんでこんなボリュームにぃ…(まだ終わらないし)






実習5日目。

この日、一気に3コマ分の授業をやらされた蓮は、実習日誌と格闘していた。キョーコのクラスでまた授業が出来たのは蓮にとっては良かったかもしれないが、その分報告すべきことも増えるので大変になる。

蓮はある程度区切りがついたところで息をついて顔を上げた。すでに時刻は放課後の時間帯となっている。さすがに何時間も書き物をしていると気分もふさいでくるし、肩も腕も痛くなってきていた。蓮はふと思いついて席を立つと、ある場所へと足を向けた。
向かった先は校舎の裏手にある庭だった。たくさんの木が植えられ、短い歩道とベンチが配置されたこじんまりとしたそのエリアは、昼休みには生徒がいることもあるが、放課後は大抵人気がない。蓮が在校中に1人になりたいときによく向かった、馴染んだ場所だ。
だが、校舎の出入り口から庭へ出ようとしたところで、人の声がすることに蓮は気がついた。

ああ、全然ダメじゃないか…

1人でボーっとしたかったので、これでは無理だ、と蓮は引き返そうとしたのだが、ふとその声に聞き覚えがあることに気がついた。蓮は戸口に寄ってそっと様子を伺う。
会話をしている男女の姿が少し離れたところに見えるが、女性の方は蓮の予想通り、最上キョーコだった。

「だから、無理だって」
「なんでだよ。去年まではお前から進んでやってたじゃねーか」
「だって…クラスが変わって範囲も違うし……ショーちゃんのクラスの人に頼めばいいじゃない」
「クラスの女子にノート借りたけど、下手っくそな奴ばっかで全然意味わかんねーんだよ!」
男の方は少しイラついているようで、段々と声が大きくなってくる。蓮はその姿を確認した。あれは、キョーコが言っていたD組の不破だ。不破尚、だっけ?蓮は名簿で確認していた男子生徒の名前を思い出した。
キョーコは尚が不機嫌なのに慣れているのか、割と冷静に言葉を返していた。

「だったら自分でちゃんと授業中ノート取ればいいんじゃないの?」
「んなのくそ真面目にやってらんねーよ」
キョーコはため息を一つ吐き出す。
「どっちにしても、もう試験予想はしてあげられないよ」
「なんだよ、お前のせいで中間テスト散々だったって言うのに」
「私のせいじゃ…」
「最近弁当だって作ってきやしねーしよ」
「…!いらないって言ったの、ショーちゃんじゃない」
「毎日女房面して持ってくんなって言っただけで、たまには作ってきたっていいだろ?」
「他に持ってきてくれる子がいっぱいいるのに?」
「どいつもこいつも見た目ばっかり凝ってて、うまくねーんだもん」
「ショーちゃん…それ、作ってきてくれた子に失礼だよ?」

尚は口の端を上げて笑うと、バカにしたような目でキョーコを見る。
「お前、いつからそんな俺に逆らうようなこと言うようになったんだよ?」
キョーコは目を伏せて唇を引き結んだが、やがて震える声で言葉を押し出した。
「私、これから一切ショーちゃんには関わらないようにするから。もう話しかけてくれなくていいよ」
尚が少し驚いたような顔でキョーコを見て何かを言いかけたところで、蓮の居るところとは反対側の校舎から、数人の女子生徒がやってきて口々に尚に声をかけた。
「尚~!こんなところにいたの?」
「どこ行ったか探してたのに。帰ろうよ」
ああ、と気のない返事を返した尚は、じろりとキョーコを見てから、女子生徒たちがやってきた方へ戻っていった。キョーコは俯いてその場に残っていたが、ふと、尚を迎えに来た内の一人の女子生徒が目の前に残っていることに気がつく。

「なに?」と怪訝な顔でキョーコが問いかけると、女子生徒は腕組みしたまま答えた。
「もう、いい加減尚に付きまとわないでよ。尚が迷惑してるのわかんないの?」
キョーコは無言で問いに答える。キョーコの雰囲気に不穏なものを感じたのか、女子生徒は少しひるんだが、「分かったわね!」と捨て台詞を吐いて去っていった。

「付きまとってなんてないもの」
キョーコは女子生徒が立ち去るのを見送ると、ぽつりと呟いてため息を吐いた。いつも学校で話しかけてくるのは尚の方からなのだ。もう声もかけられないかと思っていたのに、尚はキョーコの事を「女と思っていない」と言い放ってからも、以前と同じようにあれこれ頼んでくる。今までは喜んで言うことを聞いていたから気がつかなかったが、やってもらって当然と思っている節があるようだ。
キョーコはもう一度、深くため息をついた。

ああ…なんか私、バカみたい…
ショーちゃんにとって、本当に私は便利なだけだったんじゃない。頼られてるって浮かれてて、ほんと、傍から見たらバカみたいだったんだろうなあ……

「最上さん」
捧げ続けた想いと、費やした様々な労力を返してほしいくらいだ、などと思っていると、唐突に後ろから声を掛けられて体がはねる。
「は!はい!!」
大きな声で返事をして振り返ると、そこには蓮が立っていた。
「敦賀先生!」
「…さっき他の生徒に何か言われてたみたいだけど、大丈夫?」
「あ、全然、何もないです!」
キョーコは慌てて返事をした。どこから見られていたんだろう、と考えてみるが、おそらく女子生徒に言われたことだけ、と自分を納得させる。尚と一緒に居るところを見られたら、まだ未練があるのかと思われるだけだろう。

メガネの奥に見える蓮の目は、心配そうにキョーコを見ているように感じられた。
「そう?でもそれにしては、なんだか辛そうに見えるけど…」
「そんなこと!!全然平気です!あ、私そろそろ戻らないとバイトの時間が!」
何か心の底を言い当てられたような気がして、キョーコは腕時計を見ながら取り繕うように言うとお辞儀をして歩き出した。

「あ!ちょっと待って!」
急に蓮がキョーコを呼びとめる。キョーコはぴたりと立ち止まるとおずおずと振り向いた。
「何でしょうか…?」
「あー、いや。あの…」
蓮は少し逡巡していたが、小さく頷くとキョーコをひたと見据える。
「明後日の日曜日、何か予定はある?」
「はい??日曜日、ですか…えと、特に何もないですけど」
キョーコはいきなり問われたことに驚いて、つい素直に返答してしまった。蓮は ふ、と笑顔になると、一歩キョーコに近づいて言った。

「気分転換に、1日付き合わない?」



仕事を抜け出して訪れたオフィス近くのカフェで、社は神妙な面持ちの年下の友人と向き合っていた。

『30分でいいので、話を聞いてもらえませんか』
突然かかってきた電話では詳しい事情は聞けなかったが、口調はやけに切羽詰っていた。何か大きな問題でも起きたのだろうか。注文を取りに来た店員に社がコーヒーを頼むと、先に口を開いたのは社の向かいに座っている蓮だった。

「社さん。俺、自覚しました」
いきなり何の話だ?社は慌てた。
「え?なにを自覚したって?」

蓮は少し非難するような目つきで社を見る。
「この間飲みに行ったとき、社さん言ったじゃないですか。自覚したら俺に相談しろって」

この間…って、つい2日前だよな。だるまやで、…あれ?

社は蓮の顔をまじまじと見つめた。
「蓮、お前…もしかして、あの時の店員の女の子の事…」
「昨日今日で確信しました。俺、どうやら本気みたいです」

そんな他人事みたいに。と社は思ったが、蓮の顔は真剣だ。と思う。何せ髪とメガネが邪魔で顔がよく見えない。
「でも、どうすんだ?実習先の学校の生徒なんだよな」
「そうです。それで、どうしようかと…」

俺に相談してくるなんて、蓮も可愛いところあるじゃないか!よし、お兄ちゃんが一肌脱いでやるからな!

頼られたことに少し喜びを感じつつも、社は顎をさすりながら考えた。
「まあでも…実習が終わってほとぼりが冷めたら……大丈夫なんじゃないか?あの子、何年生だ?3年生?じゃあ、卒業まで待てば完璧じゃないか」
そうなんですけど…と蓮はばつが悪そうに目をそらす。

「え、お前もしかしてもう手を出しちゃったとか、…言わないよな?」
「さすがにそんなことはしませんよ。ただ…ちょっと勢いというか成り行きというかで、えーっと。…日曜日のデートに誘ってしまいました」
は?と社は目を丸くした。
「え、それで?OKもらったのか?」
蓮は苦笑する。コーヒーを一口すすってから、答えた。
「一応は。意味が分かってなくて驚いたままとりあえずYESと言ってしまった感じでしたが…」
はーーーーー、と呆れた顔で呆れた声を社は出した。

「チャンスっちゃチャンスだよなあ」
「だけど彼女、失恋したばっかりでまだ引きずってるんですよ」
「それもチャンスっちゃチャンスじゃないのか?」
ちょうど運ばれてきたコーヒーに手をかけながら、社はにやりと笑った。事態を飲み込んで、蓮で遊ぶモードに入ったらしい。蓮はそれを察知して眉間に皺を寄せる。
「傷ついただけじゃなくて、まだ相手のこと好きみたいなんです。その上、俺は実習生ですよ。学校にばれたら大変です」

突然、社が何かを思いついた顔をした。
「お前、その髪!地毛じゃないよな」
「そうですけど…よく分かりますね」
「じゃあ問題ない!学校関係者にお前だってばれなきゃいいだけじゃないか!その上で、あの子にも強烈に印象付けられるぞ。ちょっとやそっとの男だったら吹き飛ぶくらいの…。うん、うん!」
「社さん、1人で納得してないでちゃんと説明してくれませんか」
社は嬉々として説明を始め、そのあと二人は頭を寄せて、真剣に日曜日の戦略を練ったのだった。


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