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おとめ?の疑問

キョーコは悩んでいた。
悩んでいたので、とりあえず親友に相談することにしてみた。
お決まりのラブミー部部室で。



「はぁ?なんで急にそんなこと聞くわけ?」
眉間にしわを寄せた奏江は、台本から顔をあげてついでに声もあげた。
「だぁってぇ~~。どうしてるのかなって思って…」
キョーコはしょんぼりと叱られた子犬の顔で、両手の指をイジイジと合わせたり離したりしている。

「だってあんた、今までどうしてたのよ」
「ふ、普通に自分でやってたけどーー。初めて雑誌に写真が載るってお仕事が来ちゃったから…」
率直な疑問を投げかけてきた奏江に対して、キョーコはへどもどと答える。
タレントとして色々なお仕事を要求されるのは、嬉しいことだと思う。思うんだけど、今までの経験からかけ離れたことが多くて、色々気になってしまうのだ。

「雑誌グラビアか。水着になるの?」
視線を上に泳がせながら、考え考え奏江は質問を続ける。
「ととと、とんでもない!み、水着なんてそんな、誰も嬉しくないでしょ!普通の服よ、ちょっとミニスカートだったりキャミソールだったり、夏らしく薄着だけど」
案外喜ぶ男は多いんじゃないのかしらね、身近なところに限定しても、と奏江は思ったが、どうせ思いっきり否定するだろうと思って思うだけに留めた。

「それでね、毛深いってほどじゃないんだけど、やっぱり気になるじゃない。アングルによってはこう、アップに写っちゃったりとかして・・」
「まあ、そうね。さすがにいくら水着じゃないとはいえ、男性の夢を打ち砕くようなことがあっちゃいけないわよね」
「そう、それで、その、……しょ、処理とかどうしてるのかなって思って」
「なるほどねぇ…」
奏江がちらりと見やると、親友は真っ赤な顔で俯いている。
女同士で無駄毛処理の話をするだけでこれだけ真っ赤っかになるのだ、水着グラビアの話なんて来ても、椹が通さないだろう。

「私は、全部サロンで処理してるわよ」
奏江はあっさりと言ってのけた。
「さ、サロンってエステ?」
「うん。女優たるもの体が商品だもの。ちゃんと手入れはしておかないとね」
キョーコはがっくりとうなだれた。自分の経済状態では、エステサロンでの脱毛処理などどうひっくり返っても無理だ。
机に突っ伏しているキョーコを見て、さすがに可哀想になった奏江はフォローを入れた。
「もーー!すぐ落ち込まないの!グラビアアイドルみたいにしょっちゅう水着になって肌をさらす仕事してればともかく、単発のグラビアとか普段のテレビドラマくらいだったらそこまでしなくても大丈夫よ!」
キョーコはギギギッと顔をあげて、ほんとに?と虚ろな目で問い返す。
「肌に負担をかけないようにして、直前じゃなくて前日夜に処理して、アフターのケアもしときなさい!」
「うん、ちょっと試してみる…」
ようやっと、ちょっと復活したようだ。

「それにしても、グラビアアイドルとか雑誌モデルって大変なんだね」
「水着とか下着の場合ビキニラインの手入れまでいるものね」
「男の人の場合はどうなんだろうね?」

キョーコの唐突な問いに、奏江はあやうく飲んでいたお茶を吹き出しそうになってむせた。
「ぶっ!‥げほっげほっ!!‥‥ちょっといきなり何言い出すのよ!」
なんで?と不思議そうに首をかしげ、キョーコは続けた。
「だって…。普通の俳優さんとか芸人さんはなんかありのままって感じするんだけど。モデルさんで、腕や胸がもじゃもじゃしてるのって、なんかあんまり見た印象がないなーって思って」

そっちね…と奏江は胸をなでおろす。余計なこと考えた自分が馬鹿みたいじゃないのよ!と若干の怒りも覚えるが。
怒りついでに、意地悪な方向に話を振ってみる。
「男性モデルと言えば、身近にいるじゃないのよ、直接聞ける人が」
え?と疑問符を顔に張り付けた直後、すぐに思い当たる人物を思い描いたらしく、キョーコは顔を青くした。
「そ、な、き、聞ける訳ないじゃない、そんなこと、つ、敦賀さんに!」
「なんで?一番聞きやすいと思うわよ」
「だって、唐突に 『無駄毛の処理どうしてるんですか』なんて、どんな顔して聞くのよ~~」

コンコン

キョーコが大声を張り上げた途端、部屋のドアがノックされた。
二人は予想外のことに、口と体の動きを止める。
しばしの静寂ののち、顔を見合わせた二人だったが、恐る恐るキョーコが返事をした。
「は、はい~~?」

ドアを開けて入ってきたのは、ちょっとだけ想像した、でも今いちばん来てほしくなかった事務所の先輩その人だった。
「やあ、ごめんね。ちょっとお邪魔してもいいかな」
満面の笑みが、なんだか逆に怖い。キョーコはもちろん、奏江も、どこから聞かれてたんだろうかと様子を探ってしまっていた。
後ろから蓮に続いて入ってきた社がちょっと気まずそうなのを見ても、少なくとも最後の方は聞いていたんだろう。

蓮は椅子に腰をおろすなり直球でズバリと切り出した。
「で?俺に何を聞きたいのかな?」

うぎゃーーーー!!
逃げ出したくなるのを堪え、必死に言い訳を探す二人。
適当な言い訳が見当たらず、汗をだらだらたらしながら、キョーコが重い口を開いた。
「つ、敦賀さんにおかれましては、俳優のみならずモデルのお仕事をされてるわけですがぁ‥。あ、足とか腕とか、そ、その、た、た、体毛は、男性のモデルの方はどうなさっているのかなあ、と馬鹿なことを考えましてぇ」
最後の方は涙目になりながら、必死に正直にキョーコは答えた。

いじめてるつもりはないんだけどなぁ、と蓮は思いながらも、折り返していたシャツの袖をさらにまくって、にゅ、と腕を突き出す。
「俺はもともと薄い方なんだけどね」
先ほどの怯えはどこに行ったのか、キョーコも奏江も突き出された腕をまじまじと至近距離で観察する。

「あれ?毛がないんじゃなくて…」
「色が薄い?脱色してるんですか?」

遠目に見ると蓮の腕はつるっとして毛がないように見えるが、近くで見ると見えにくいのだということがわかる。
肌の色に近い、金髪のため、目立たないのだ。

「さすがに腋なんかは脱色じゃNGでちゃうから処理するんだけど」
言ってしまえば、腕も脚も腋も地毛が金髪なのだが、それは当然伏せておく。

「なるほど…脱色という手もあるんですねぇ」とキョーコは感心しきりだ。

「ところで最上さん」
「は、はい!?」
おかしい。難局は乗り切ったはずなのに、ここに来て初めてキョーコの怨キョレーダーがゾクゾクと反応し始めた。
キョーコが恐る恐る蓮の顔をうかがうと、そこには満面の似非紳士笑顔が張り付いていた。

「グラビア…やるんだって?」
「は、はい!いやあの!グラビアといってもそんな大層な感じでもなく!」
「水着…着るの?」

なんでみんな水着着用の有無を気にするのよぉ~~と思いながら、キョーコは必死に答える。
「いえ!水着はありません!普通に、普通な、お洋服で撮っていただきます!」
「もし、服でも露出度が高過ぎるようだったら、ちゃんと椹さんに言うんだよ?『京子』のイメージを安易にお色気路線に振ったらもったいないからね」
もっともらしい理由をつけながらしっかり釘をさす蓮だったが、その裏にどんより漂う負のオーラは消しようがない。
「は、はい!肝に銘じておきます!」
びっしりと敬礼で答えるキョーコは丸っきり疑っていないようだ。
さすが敦賀さん、後輩のイメージのことまで考えてくれるなんて!!と感動してしまっている。

(何余計な情報を余計な人に入れてるんですか)
(ごめん、ついうっかり口が滑って)

脇で視線と表情で会話をする二人をよそに、蓮のお説教はこんこんと続く。

しかしこれ以来、キョーコは蓮の筋肉や骨格だけでなく表皮情報までも観察するようになったとか。




…私も、色々疑問。
それにしても少女マンガの男性って体毛、ないですよね・・
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コメントコメント


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Re: おはようございます

> 瑞穂様

再度のご訪問&コメント ありがとうございます!!
とてもうれしいです~~~。励みになります!

蓮だけじゃなくて、尚もつるんつるんですよね。
金髪の人ってひげも金?とか、眉毛は染めてるの?とか、どうでもいいことばかり考えたりして我ながらどうかと思います。ほんとに。

感想いただけるの、本当にうれしいんですよ~!
ありがとうございましたー!

ぞうはな | URL | 2012/08/31 (Fri) 23:00 [編集]